相互作用する多粒子のハミルトニアンからファンデルワールスの状態方程式の導出する方法:詳細な計算の過程

1. 系の設定 ―― 相互作用を含むハミルトニアン

\[
H = \sum_{i=1}^{N} \frac{\mathbf{p}_i^{2}}{2m}
+ \sum_{1\le i<j\le N} u(r_{ij})
\]

運動エネルギー:\(\mathbf{p}_i\) は粒子 \(i\) の運動量。
相互作用ポテンシャル:\(u(r_{ij})\) は粒子間距離 \(r_{ij}=|\mathbf{r}_i-\mathbf{r}_j|\) のみで決まる中央力。

  1. 斥力(短距離):硬い芯 — \(u(r)=\infty\) for \(r<\sigma\)
  2. 引力(長距離):弱い負の尾 — 例として Lennard–Jones の \(-1/r^{6}\) 項など

2. カノニカル分配関数(古典極限)

\[
Z_N(T,V)
= \frac{1}{N!\,h^{3N}}
\int \prod_{i=1}^{N} \mathrm{d}^3 p_i \,\mathrm{d}^3 r_i\;
\exp\!\bigl[-\beta H(\{\mathbf{p}_i,\mathbf{r}_i\})\bigr],
\qquad \beta=\frac{1}{k_B T}
\]

運動量積分:

\[
\int \mathrm{d}^3 p\; e^{-\beta p^{2}/2m}
= (2\pi m k_B T)^{3/2}
\]

したがって

\[
Z_N
= \frac{1}{N!}
\left( \frac{2\pi m k_B T}{h^{2}} \right)^{\!3N/2}
Q_N(T,V),
\qquad
Q_N \equiv
\int \prod_{i=1}^{N} \mathrm{d}^3 r_i\;
\exp\!\Bigl[-\beta \sum_{i<j} u(r_{ij})\Bigr]
\]

3. 配置積分 \(Q_N\) の近似

硬球近似(斥力)より

\[
V_{\text{eff}} = V – N b,
\qquad
b = \frac{2\pi}{3}\,\sigma^{3}
\]

平均場近似(引力)より

\[
\sum_{i<j} u_{\text{att}}(r_{ij})
\approx -\frac{a N^{2}}{V},
\qquad
a = -2\pi
\int_{\sigma}^{\infty} u_{\text{att}}(r)\, r^{2}\,\mathrm{d}r
\]

したがって

\[
Q_N \approx (V – N b)^{N}\;
\exp\!\Bigl[\beta a N^{2} / V\Bigr]
\]

4. 自由エネルギーと圧力

\[
F = -k_B T \ln Z_N,
\qquad
P = -\left( \frac{\partial F}{\partial V} \right)_{T,N}
= \frac{N k_B T}{V – N b}
– \frac{a N^{2}}{V^{2}}
\]

5. ファンデルワールスの状態方程式

物質量 \(n=N/N_A,\; R=N_A k_B\) とおくと

\[
\boxed{
\left(
P + \frac{a n^{2}}{V^{2}}
\right)
(V – n b)
= n R T
}
\]

係数の物理的意味
\(b\):粒子が排他する「自分の場所」 — 短距離斥力の寄与
\(a\):粒子間引力がつくる平均場エネルギー — 長距離引力の寄与

(ChatGPT o3)

同じことをclaude Opus 4にもお願いしてみました。

多粒子系からファンデルワールス方程式を導出します。各ステップを丁寧に説明していきます。

1. 出発点:相互作用する粒子系のハミルトニアン

N個の粒子からなる系を考えます。各粒子の位置を $\vec{r}_i$、運動量を $\vec{p}_i$ とします($i = 1, 2, …, N$)。

系全体のハミルトニアンは: $$H = \sum_{i=1}^{N} \frac{p_i^2}{2m} + \sum_{i<j} u(|\vec{r}_i – \vec{r}_j|)$$

第1項は全粒子の運動エネルギーの和です。$p_i^2 = \vec{p}_i \cdot \vec{p}_i$ は粒子$i$の運動量の大きさの2乗です。

第2項は粒子間の相互作用エネルギーの和です。$u(r)$ は粒子間距離 $r = |\vec{r}_i – \vec{r}_j|$ だけに依存する2体ポテンシャルです。

2. レナード・ジョーンズポテンシャル

粒子間相互作用として、次の形を仮定します: $$u(r) = 4\epsilon \left[\left(\frac{\sigma}{r}\right)^{12} – \left(\frac{\sigma}{r}\right)^6\right]$$

  • $r^{-12}$ の項:近距離での強い斥力(粒子が重なるのを防ぐ)
  • $r^{-6}$ の項:遠距離での弱い引力(ファンデルワールス力)
  • $\epsilon$:相互作用の強さを決める定数
  • $\sigma$:粒子の実効的な大きさを決める定数

3. 統計力学による分配関数

温度 $T$ での正準分配関数は: $$Z = \frac{1}{N!h^{3N}} \int \exp\left(-\frac{H}{k_B T}\right) d^{3N}p , d^{3N}r$$

ここで:

  • $N!$ は同種粒子の区別不可能性による因子
  • $h$ はプランク定数(量子力学的な補正)
  • $k_B$ はボルツマン定数
  • $d^{3N}p$ は全粒子の運動量空間での積分
  • $d^{3N}r$ は全粒子の位置空間での積分

4. 運動量積分の実行

運動エネルギー部分の積分を先に実行します: $$\int \exp\left(-\frac{\sum_i p_i^2}{2mk_B T}\right) d^{3N}p = \prod_{i=1}^N \int \exp\left(-\frac{p_i^2}{2mk_B T}\right) d^3p_i$$

各粒子について独立にガウス積分を実行できます。1粒子の運動量積分は: $$\int_{-\infty}^{\infty} \exp\left(-\frac{p_x^2}{2mk_B T}\right) dp_x = \sqrt{2\pi mk_B T}$$

3次元では $p_x, p_y, p_z$ それぞれで同じ積分をするので: $$\int \exp\left(-\frac{p_i^2}{2mk_B T}\right) d^3p_i = (2\pi mk_B T)^{3/2}$$

N粒子全体では: $$\int \exp\left(-\frac{\sum_i p_i^2}{2mk_B T}\right) d^{3N}p = (2\pi mk_B T)^{3N/2}$$

5. 配置積分

分配関数は次のようになります: $$Z = \frac{1}{N!} \left(\frac{2\pi mk_B T}{h^2}\right)^{3N/2} Q_N$$

ここで配置積分 $Q_N$ は: $$Q_N = \int \exp\left(-\frac{\sum_{i<j} u(r_{ij})}{k_B T}\right) d^{3N}r$$

6. メイヤー関数の導入

計算を進めるため、メイヤー関数を定義します: $$f_{ij} = \exp\left(-\frac{u(r_{ij})}{k_B T}\right) – 1$$

これを使うと: $$\exp\left(-\frac{u(r_{ij})}{k_B T}\right) = 1 + f_{ij}$$

配置積分の被積分関数は: $$\prod_{i<j} \exp\left(-\frac{u(r_{ij})}{k_B T}\right) = \prod_{i<j} (1 + f_{ij})$$

7. クラスター展開

積を展開すると: $$\prod_{i<j} (1 + f_{ij}) = 1 + \sum_{i<j} f_{ij} + \sum_{i<j} \sum_{k<l \neq i,j} f_{ij}f_{kl} + …$$

希薄気体では $f_{ij}$ は小さいので、2次の項まで取ります: $$Q_N \approx V^N + V^{N-2} \sum_{i<j} \int f_{ij} d^3r_i d^3r_j + …$$

8. 2体相互作用の積分

2粒子の相互作用項を計算します。粒子1を原点に固定し、粒子2との相対座標で積分します: $$\int f_{12} d^3r_1 d^3r_2 = V \int f(r) d^3r$$

ここで $f(r) = \exp(-u(r)/k_B T) – 1$ です。

球座標で積分すると: $$\int f(r) d^3r = 4\pi \int_0^{\infty} r^2 f(r) dr$$

9. 第2ビリアル係数

積分結果を第2ビリアル係数 $B_2(T)$ と定義します: $$B_2(T) = -\frac{1}{2} \int f(r) d^3r = -2\pi \int_0^{\infty} r^2 [\exp(-u(r)/k_B T) – 1] dr$$

配置積分は: $$Q_N \approx V^N \left(1 – \frac{N(N-1)}{2V} B_2(T) + …\right)$$

10. 自由エネルギーと圧力

ヘルムホルツ自由エネルギーは: $$F = -k_B T \ln Z = -k_B T \ln\left[\frac{1}{N!} \left(\frac{2\pi mk_B T}{h^2}\right)^{3N/2} Q_N\right]$$

スターリング近似 $\ln N! \approx N\ln N – N$ を使い、$Q_N$ の展開式を代入します。

圧力は $P = -(\partial F/\partial V)_{T,N}$ から求められます: $$P = \frac{Nk_B T}{V} \left(1 + \frac{N}{V} B_2(T) + …\right)$$

11. ファンデルワールス方程式への変換

第2ビリアル係数を2つの部分に分けます:

斥力部分(近距離):粒子の排除体積効果を与えます $$b = 2\pi \int_0^{r_0} r^2 dr = \frac{2\pi r_0^3}{3}$$

ここで $r_0$ は粒子の実効的半径です。

引力部分(遠距離):平均場近似で $$a = 2\pi \int_{r_0}^{\infty} r^2 u(r) dr$$

これらを使って圧力の式を書き直すと: $$P = \frac{Nk_B T}{V – Nb} – \frac{N^2 a}{V^2}$$

両辺に $V/N$ をかけ、$v = V/N$(モル体積)とすると:

$$\left(P + \frac{a}{v^2}\right)(v – b) = k_B T$$

これがファンデルワールスの状態方程式です。通常の表記では $R = N_A k_B$(気体定数)を使って:

$$\left(P + \frac{a}{v^2}\right)(v – b) = RT$$

ここで:

  • $a/v^2$ は分子間引力による圧力の補正
  • $b$ は分子の体積による補正(利用可能な体積の減少)

を表しています。

(Claude Opus 4)

 

ビリアル展開との関係:ビリアル展開を使ったか

(ChatGPT o3) 先ほどのファンデルワールス導出で「使ったか」? 厳密には “完全なビリアル展開” は行っていません が、ロジックはその 第 2 ビリアル係数を取り出し、残りを平均場で再和 しているのと本質的に同じです。

ビリアル展開 (Virial Expansion) とは

気体の圧力を密度 \(\rho = N/V\) の冪級数で表す統計力学的展開です。

\[
\frac{P}{k_B T\,\rho}
\;=\;
1
+ B_2(T)\,\rho
+ B_3(T)\,\rho^{2}
+ B_4(T)\,\rho^{3}
+ \cdots
\]

  • ビリアル係数 \(B_n(T)\):
    温度 T ごとに決まる \(n\) 体相関の強さ。
    例:
    \[
    B_2(T)= -\tfrac{1}{2}\!
    \int \!\bigl(e^{-\beta u(r)}-1\bigr)\,4\pi r^{2}\,dr
    \]
    (ペアポテンシャル u(r) が既知なら計算可能)
  • 低密度 \(\rho\to0\)
    \(P=\rho k_B T\)(理想気体)に漸近。

ファンデルワールス方程式との関係

硬球半径 \(\sigma\)
平均引力パラメータ \(a\) を用いた
ファンデルワールスの導出は、実質的に
第 2 ビリアル係数まで を取り込み、排除体積 \(b\) を再和(resummation)したものです。

\[
\boxed{
P
= \frac{\rho k_B T}{1-\rho b}
– a\,\rho^{2}
}
\]

低密度でテイラー展開すると

\[
\frac{P}{\rho k_B T}
= 1
+ \bigl(b – a/k_B T\bigr)\,\rho
+ O(\rho^{2}),
\]

すなわち
\(B_2(T)=b-a/k_B T\) を再現しつつ、
排除体積項を
\((1-\rho b)^{-1}
= 1 + b\rho + b^{2}\rho^{2} + \dots\)

と幾何級数的に再和している、と解釈できます。

ステップ ビリアル展開での位置づけ
硬球近似(排除体積 b \(B_2\) の斥力部分
平均場引力(係数 a \(B_2\) の引力部分(\(-a/k_B T\))
\((V – N b)^{-1}\) への置換 \(b\rho, b^{2}\rho^{2},…\) を
高次項として再和

まとめ

  • ビリアル展開は 圧力 P密度 \rho の級数で整理し、
    各係数 Bnn 体相互作用を表す。
  • ファンデルワールス方程式は
    第 2 ビリアル係数 を取り入れ、
    排除体積効果を再和して
    高密度側の精度を少し補正した簡易モデル。

(ChatGPT o3)

ビリアル展開を使ったか

(Claude Opus 4)

ビリアル展開は、実在気体の状態方程式を密度(または圧力)のべき級数として表現する方法です。

理想気体の状態方程式 $PV = NkT$ を、密度 $n = N/V$ の展開として書き直すと:

$$\frac{P}{nkT} = 1 + B_2(T)n + B_3(T)n^2 + B_4(T)n^3 + …$$

ここで $B_2(T), B_3(T), …$ を第2、第3、…ビリアル係数と呼びます。

先ほどの導出でビリアル展開を使った箇所

ステップ7で使いました

配置積分の展開: $$\prod_{i<j} (1 + f_{ij}) = 1 + \sum_{i<j} f_{ij} + \sum_{i<j} \sum_{k<l \neq i,j} f_{ij}f_{kl} + …$$

これがビリアル展開の核心部分です。

なぜこれがビリアル展開なのか

  1. 理想気体からのずれを系統的に扱う
    • $f_{ij} = 0$ なら理想気体(相互作用なし)
    • $f_{ij}$ の1次の項:2体相互作用の効果
    • $f_{ij}$ の2次の項:3体、4体…の効果
  2. 密度展開になる理由配置積分 $Q_N$ を計算すると: $$Q_N = V^N \left(1 + \frac{N(N-1)}{2V} \times (-B_2) + …\right)$$ここで $N(N-1)/2V \approx N^2/2V = (N/V)n/2$ となり、密度 $n$ のべき展開になります。
  3. 第2ビリアル係数の物理的意味$$B_2(T) = -\frac{1}{2} \int f(r) d^3r$$これは2粒子間の相互作用による理想気体からのずれを表します。

ビリアル展開の利点

  1. 系統的な近似:密度が小さいとき、高次の項は急速に小さくなる
  2. 厳密な統計力学に基づく:近似的なモデルではなく、厳密な展開
  3. 実験との比較が容易:各ビリアル係数を実験的に決定できる

ファンデルワールス方程式との関係

ファンデルワールス方程式は、ビリアル展開の第2項までを取り、それを全密度領域で使えるように「再足し上げ」した形と解釈できます:

$$P = \frac{nkT}{1 – nb} – an^2$$

これを低密度で展開すると: $$P = nkT(1 + nb + …) – an^2$$ $$P = nkT + n^2kT(b – \frac{a}{kT}) + …$$

つまり、ファンデルワールスの $a$ と $b$ は第2ビリアル係数と次の関係にあります: $$B_2(T) = b – \frac{a}{kT}$$

(Claude Opus 4)