安藤昇(1926.5.24-2015.2.16)の言葉

石原慎太郎が亡くなった後、本屋にぶらりと立ち寄ったら、石原慎太郎のメモリアルで著書が目立つ場所に置いておありました。『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』というタイトルで、表紙の写真が印象的でした。最初の数ページを読んだらとても読み易い文章で、安藤昇の世界に引き込まれてしまいました。
安藤昇氏は自伝的な本を自著でも何冊か出版していました。最初に読んだのが、『男の品位』。ズケズケと人生のこと、社会のことに関して持論を述べています。

次に読んだのが、『男の終い仕度』。先の『男の品位』でもかなり下ネタ系(性に関すること)をズバズバと書いていたのですが、それをはるかに上回る過激な内容でした。ブログに書ける範囲を超えているのでここでは紹介できません。ここでは一般的な内容で、興味深い言葉を紹介することにします。

生きることと死ぬことについて

生きようとして叶わず、死のうとして叶わず、全ては天の配剤に依る(『男の終い支度』)

孤独について

「人生はさみしい」じゃなく、「さみしいのが人生」

信用について

「信用がある」と周囲に認められるには、ウソをつかず、人を騙さず、利己的にもならず、つきあいを綺麗にして約束は寸分も違えないなど、自分を律する厳しい処し方が求められ、それを積み重ねた先に信用というものがある。(『男の品位』)

「やる」と言ったら、途中でヤバくなってもやめない。「やらない」といったら、テコでも動かない。(『男の終い支度』)

お金について

カネはつかってナンボ。貯め込んでいるだけでは意味がないと思うのだ。‥ 預金通帳を握って寝たきりになるよりも、存分に人生を謳歌し、楽しかった思い出を懐に寝たきりになったほうが、ずっとずっと幸せだろうと俺は思っている。‥つかうカネがないというなら稼げばいい。(『男の終い支度』)

人生の決断について(進退)

(どうしようかな)という迷いがよぎったときは、思い切って見切ることだ。‥ さっさと見切り、次のステージに進めばよい。‥ 早すぎず、遅すぎずが極意で、その目安を、迷いが生じたときと俺は決めているのだ。(『男の終い支度』)

将来の保障について

「次」という受け皿を決めて行動したことは一度もないんだ。‥ 計画性がないと言えば、そのとおりだ。ただ、性分として、”保険”をかける生き方を潔しとしなかった。いつもその心境で生きてきたということかな。これまで何とか生きてきたなら、これからも何とか生きていける。人生というやつは、保険などかけなくても何とかなるもんだ。(『男の終い支度』)

運命について

丁と出ようと半と出ようと、賽の目に責任はない。一喜一憂するのは賽の目に賭ける人間の勝手。賽の目を「人生」に置き換えれば、どっちに転ぼうと受け入れるしかない。(『男の品位』)

幸が不幸の原因になり、不幸が幸の原因になるというように、両者は表裏の関係にあるんじゃないか。‥ つまり人生は「山あり谷あり」じゃなく、「山に見えて、実は谷」「谷に見えて、実は山」ということなのだ。(『男の終い支度』)

時間を守ることについて

約束の基本は「時間」だ。時間を守れるかどうか、信用も品位もすべてここでわかる。‥時間に遅れる人間は、そのこと一つをもって信用ゼロだと考える。‥ 約束に重いも軽いもない。一事が万事で、ひとつの約束を守れないような人間は、ほかの約束も守れないのである。(『男の品位』)

溜息について

祖母が良く、「溜め息をつく人のそばへ行っちゃいけないよ」と言っていた。‥ すなわち、おばあちゃんが諭した”溜め息をつく人”の息は、毒気だったということになる。(『男の終い支度』)

粋について

ひらたく言えば、粋とは「瘦せ我慢」のことだね。おごるカネがないなら、端から飲みに行かない。(『男の終い支度』)

言葉について

ネーミングというのは不思議なものだ。「女給」が「ホステス」と呼ばれるようになって、何となくハイカラになった。「売春」が「援助交際」になって、そう悪いことでもないような気分になる。‥ 本質は、ネーミングによって、いかようにも変容していくということ。(『男の終い支度』)

女性に選ばれる男性とは

女は「生活力」のある男を選ぶ。自分のために闘ってくれ、自分を守ってくれる男に惚れる。(『男の品位』)

女性の口説き方

「俺と一回やらせてくれ」セリフは、この一言でいい。‥女を口説くとき、言葉にウソがあったらうまくいかない。口先だけの言葉は、すぐに馬脚を現す。しかし「一回やらせてくれ」という気持ちにウソ偽りはまったくない。だから、確実に女の気持ちを打つと、経験から断言しておきたい。(『男の品位』)

女性の旬の時期について

蕾がふくらんできて、さあ開くか、というところが二十歳で、その蕾が満開で咲き誇るのが二十八歳。

女性との別れ方

「別れよう」とハッキリ告げればいい。‥ (この女はダメだ)と思ったら我慢しないこと。‥ イヤになったのだったら「イヤになった」、厭きたのだったら「厭きた」と、自分の気持ちを正直に告げることだ。女の気持ちを傷つけたくないというのはごまかしで、コトを穏便にすませようとしているだけなのだ。(『男の品位』)

結婚について

男の人生は、女房できまる。このことを先人は《悪妻は百年の不作》として戒めた。‥ではどいういう女が賢婦か。内助の功で、夫のために献身的につくす女だ。(『男の終い支度』)

離婚について

口うるさい女房と暮らせば、男の晩年が不幸になるのは当然なのである。‥ 俺はこれまで七回も八回も”離婚してきたが、人生、意思を貫けば、不思議と収まるところに収まるものなのである。(『男の終い支度』)

 

人生の終活

食べたいものを食べる。‥いい女がいれば口説く。病気になったら、それもよし。「終い支度」というのは禁欲なんかじゃない。人生に悔いを残さないことをいうのだ。(『男の終い支度』)

 

安藤昇の著作・安藤昇に関する著作

  1. 安藤昇『大人の男と女の色欲修行』 2022/1/12さくら舎:デイリースポーツ紙連載38回分(1993年2月22日~4月16日)の書籍化。
  2. 向谷 匡史『安藤昇と花形敬』2021/10/15 青志社
  3. 石原 慎太郎『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』2021/5/12 幻冬舎
  4. 安藤 昇『男の品位』2015/12/17 青志社
  5. 山口 猛『映画俳優安藤昇』 (ワイズ出版映画文庫) 2015/6/1  ワイズ出版
  6. 安藤昇『人生のツキを呼ぶ九門家相術の極意』 2014/8/6 青志社
  7. 安藤 昇『男の終い仕度』2012/8/21  青志社
  8. 安藤 昇『安藤昇の戦後ヤクザ史 昭和風雲録』 (ベストセレクト 817) 2012/1/1 ベストブック f
  9. 安藤 昇『男の覚悟』2009/10/11 青志社
  10. 安藤昇『王者の煩悩 』2008/7/1 コアマガジン
  11. 安藤昇『不埒三昧―わが下半身の昭和史 』 2001/7/1 祥伝社
  12. 安藤 昇『自伝 安藤昇』 2001/6/1  ぶんか社
  13. 安藤 昇『ツキを呼び込む九門家相術入門―あなたの家の“殺門”“鬼門”を“生門”に変える』 (ゴマブックス) 1993/1/1 ごま書房

映画・DVD

  1. 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録 【キャスト】安藤昇、萩野まゆみ、蟹江敬三、小池朝雄、小松方正 1976年10月公開
  2. 懲役十八年
  3. 密告
  4. 安藤組外伝 人斬り舎弟 [DVD] 安藤昇 (出演), 菅原文太 (出演), 中島貞夫 (監督) 1974年11月公開 昭和27年―39年にかけて、関東にその名を馳せた“安藤組”。その中にあって、暴力史上最も恐れられ“人斬り”の異名をとった大幹部に菅原文太が扮して好演。安藤昇も本人役を熱演した実録暴力巨編!
  5. 実録安藤組 襲撃編 【キャスト】安藤昇、梅宮辰夫、安岡力也、郷鍈治、小林稔侍、丹波哲郎, 佐藤純弥 (監督)  1973年12月公開 [VHS発売日 ‏ : ‎ 1988/4/8 東映ビデオ] [DVD 発売日 ‏ : ‎ 2021/8/4 ]  やくざと抗争 実録安藤組の続編
  6. 実録・私設銀座警察 安藤昇 (出演), 梅宮辰夫 (出演), 佐藤純彌 (監督) 形式: DVD1973年7月公開
  7. やくざと抗争 実録安藤組 【キャスト】安藤昇、江守徹、丹波哲郎、山本麟一、渡辺文雄 1973年3月公開  [DVD発売日 ‏ : ‎ 2016/6/8]
  8. やくざと抗争 安藤昇 (出演), 菅原文太 (出演), 佐藤純彌 (監督) 形式: DVD 1972年9月公開
  9. 男の顔は履歴書 あの頃映画 松竹DVDコレクション 安藤昇 (出演), 中谷一郎 (出演), 加藤泰 (監督) 形式: DVD
  10. 血と掟 1965年8月29日公開【キャスト】安藤昇ほか 松竹 安藤昇の俳優としてのデビュー作

コミック

  1. 実録安藤組

 

安藤昇を語るときのキーワード・キーフレーズ

  1. 子孫に美田を残さず
  2. 武士は食わねど高楊枝
  3. 雪後の松
  4. 足るを知る
  5. 心は渕なるを善しとす(老子 上善如水)
  6. 人間一生物見遊山
  7. 山岡鉄舟 ”ボロ鉄” 幕末の三舟(勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟)の一人
  8. 人生はラグビーボール
  9. 禍福は糾える縄の如し
  10. 宝味
  11. 三十させごろ、四十しざかり
  12. もうはまだなり、まだはもうなり (相場の格言)
  13. 歯から先に出た言葉は守るもの
  14. 人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり (「敦盛」)
  15. 人生、古より誰か死無からん 文天祥(南宋の政治家)
  16. 鶴は千年、亀は万年、我は天年 仙崖(江戸時代の禅僧)
  17. 白洲次郎 サンフランシスコ講和条約 吉田茂 吉田のトイレットペーパー 不思議な巻紙の勧進帳
  18. ビュリダンのロバ
  19. 三木武吉
  20. 末ついに海となるべき山水も しばし木の葉の下くぐるなり
  21. 韓信の股くぐり
  22. 商人と屏風は曲がらねば立たぬ
  23. 料理上手は床上手
  24. 悪妻は百年の不作
  25. 女房と牛は三日目にどつけ
  26. 身・体・髪・膚、之を父母に受く、敢えて毀傷せざるは孝の始なり(教育勅語)
  27. 鶯の谷渡り
  28. 来年の今月今夜のこの月を。僕の涙で曇らせてみせる。 (尾崎紅葉 金色夜叉) 
  29. 口説くに易く、別れるに難し