シュレーディンガー方程式~極座標表示でのラプラシアン∇2

量子力学や量子化学の講義では、水素の原子軌道(電子の軌道のこと)をシュレーディンガー方程式を解くことで求めるということをやります。シュレーディンガー方程式にはラプラシアン∇2が入っているので、極座標表示でのラプラシアンの形を知る必要があります。高校まではx、y、zの座標に慣れ親しんできたため、r、θ、φの座標系での偏微分が出てくると圧倒されてしまいそうです。r、θ、φの座標系でのラプラシアン∇2(∇の演算を2回続けること)を求めるのに授業時間のかなりを割かれたような気がします。もしくは、結果だけ示してしまう講義もあるかもしれません。

自分が知る限り、このゴリゴリの計算の過程を掲載している教科書としては、

真船文隆『量子化学 基礎からのアプローチ』くらいかと思います(最終の式は72ページ、計算過程は248~249ページ))。

 

rは原点からの距離、 θはz座標からの角度、φは、空間上の点をxy平面に投影した点のx座標からの角度として、(x,y,z)座標で表された点(x,y,z)を、極座標表示(r, θ, φ)すると、関係式は、

x = r sinθ cosφ

y = r sinθ sinφ

z = r cosθ

となります。ここで知りたいことは、

∇2 =∇・∇= (∂2/∂x2 +∂2/∂y2 + ∂2/∂z2)   (ただし∂2/∂x2は ∂/∂xの演算を2回続けておこなう演算)

が、r, θ, φの偏微分ではどういう式で表されるかということです。答えを先に書いてしまうと、

∇2= ∇・∇= (1/r^2) ∂/∂r (r^2 ∂/∂r) + (1/r^2) sin2 θ ∂/∂θ (sinθ ∂/∂θ) + 1/r^2 sin2 θ ∂2/∂φ2

となります。フォントが適当でわかりにくいかもですが、sin2 θはサインθの2乗のことです。^も、べき乗の記号です。

この式を高校レベルの知識で求めることもできて、ネットでも怒涛の計算を示したサイトがいくつかあります。大学物理で量子力学の授業でもえんえんと求めたような記憶があります。自分はついていけませんでしたが。

ところが、大学レベルの物理数学の知識があると、この一見複雑怪奇な式は、高校レベルの怒涛の計算をしなくても比較的簡単に求まります。それを知ったときは、自分はかなり感動しました。

BOASやARFKENの物理数学の教科書で紹介されています。BOASのほうが言葉による説明が丁寧ですが、ARFKENの教科書もよくまとまっていて話の筋が追いやすいので、結局両方を読み比べながらなんとか理解しようと奮闘しています。

三次元空間上の微小変位 ds^2 = dx^2 + dy^2 + dz^2 が、他の座標表示(q1, q2, q3)でどうなるかというと、スケールファクターh1, h2, h3 として、一般的に

ds^2 = (h1*dq1)^2 + (h2*dq2)^2 + (h2*dq2)^2 (ARFKEN 184ページ 式(3.130)

であり、

∇2=(1/ h1*h2*h3) [ ∂/∂q1 (h2*h3/h1 * ∂/∂q1) + ∂/∂q2 (h3*h1/h2 * ∂/∂q2)

+∂/∂q3(h3*h1/h3 * ∂/∂q3) ]   (ARFKEN 186ページ 式(3.142))

となります。これは非常に暗記しやすい形です。1⇒2⇒3と添え字を変えればいいだけなので、実際には第1項を暗記すればいいわけです。

いま、q1 = r,  q2 = θ,  q3 = φ ですので、座標表示(r, θ, φ)におけるラプラシアンへの(x,y,z)座標からの変換の公式は、

∇2=(1/ h1*h2*h3) [ ∂/∂r (h2*h3/h1 * ∂/∂r) + ∂/∂θ (h2*h3/h1 * ∂/∂θ) +∂/∂φ (h2*h3/h1 * ∂/∂φ ]

となります。このスケールファクターh1, h2, h3がわかればいいわけです。h1, h2, h3の公式はARFKENの184ページに式(3.131)として紹介されていて、

hi^2  = (∂x/∂qi)^2 + (∂y/∂qi)^2 + (∂z/∂qi)^2

です。ただし、i=1, 2, 3です。

x = r sinθ cosφ

y = r sinθ sinφ

z = r cosθ

ですから、これらをr, θ,  φ でそれぞれ偏微分してやればh1, h2, h3の2乗の値が求まるというわけです。sin2 θ + cos2 θ =1 の公式により式は簡単になりますので、この計算はどうということもなくて、

h1 ^2 = 1

h2 ^2 = r^2 * sin2 θ  (サインθの2乗のつもり)

h3 ^2= r^2

h1,h2,h3はスケールファクターなので正の値を採用すればいいはずで、

h1 = 1

h2 = r sinθ

h3 = r

となります。これを上の公式に当てはめて、ちょこっと計算すると、欲しかった式になります。

∇2 = (1/ r^2) ∂/∂r (r^2 ∂/∂r) + (1/ r^2) sin2 θ ∂/∂θ (sinθ ∂/∂θ) + (1/ r^2 sin2 θ) ∂2/∂φ2

(∂2/∂φ2 は、∂/∂φ を2回繰り返す記号のつもり)

 

∇とかラプラシアン△とか記号が似ていて混乱しそうです。

ナブラ∇ = (∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z)

ラプラシアン△=∇2= ∇・∇=∂2/∂x2+∂2/∂y2+∂2/∂z2

参考

  1. 6章 ラプラシアン,ベクトル公式,定理 wave.ie.niigata-u.ac.jp
  2. ナブラを使え! eman-physics.net