無限集合の定義 素朴な定義からデデキントの定義まで

日本語で「無限」と言う言葉は子供の時に知りますし、高校の数学でも「無限」と言う言葉は出てきたと思います。無限に大きいとか。無限大とか。しかし、無限とは何かよくよく考えてみると、なんだか曖昧な言葉だと思います。

有限集合の定義

有限個の元からなる集合を有限集合という。(森田茂之『集合と位相空間』3ページ)

無限集合の定義

有限個の元からなる集合を有限集合、そうでないものを無限集合という。(森田茂之『集合と位相空間』3ページ)

上の定義の日本語は、ちょっと曖昧で、「そうでないもの」の「そう」は何を指すのでしょうか。有限個の元(げん)からならないものを無限集合と定義したのか、有限集合でないものを無限集合と言っているのか。まあ、有限個の元からなるもの=有限集合なので、どちらの日本語の解釈でも実は同じことなので、問題にならないとは思いますが、どっちかにして欲しいと少し思いました。

しかし、有限とは何かという説明がないため、無限の説明にもなっておらず、曖昧さが残ったように感じます。

別の教科書(尾畑伸明『集合・写像・数の体系』)を見てみると、

有限個の元からなる集合を有限集合と言い、有限集合Aの元の個数を|A|と表す。有限個の元から成ることの意味は明かなことのように思われるが、数学的な説明を要することではある。有限集合でない集合を無限集合という。(言葉は一字一句そのままではありません)

といった説明がありました。そして、その説明のあとのほうのページで、全単射をつかった有限集合の定義がありました。ただし、無限集合の定義は、相変わらず「有限集合でない集合」と定義されていました。しかし、もっとあとの章で、デデキントによる無限集合の定義が紹介されていました。

定義 集合は、それ自身と同じ濃度をもつ新部分集合を含むとき、デデキント無限集合という。そうでない集合はデデキント有限集合という。

デデキント無限集合、デデキント有限集合という言葉遣いは、ちょっと聞きなれないのですが、選択公理を採用した場合には、デデキント無限集合は従来の定義による無限集合と同じものなのだそうです。選択公理を認めない立場をとると、デデキント無限集合と従来の定義による無限集合とが一致しない場合が出てくるため、このような言い回しになっています。『集合・写像・数の体系』の説明は、詳細、丁寧で明解だと思います。買って良かった。

教科書のどの段階でどこまで厳密な定義を与えるかは、その教科書の執筆方針によるのだと思います。入門的な教科書の最初でいきなり厳格な議論はしにくいからです。また、集合がメインの教科書か、位相がメインの教科書かでも必要に応じて取り扱い方が異なるのだろうと思います。

参考図書

  1. 森田茂之『集合と位相空間』
  2. 尾畑伸明『集合・写像・数の体系』