ルベーグ積分というのは、昔大学4年くらいで授業があったような気がするけど、全く理解できなかったので記憶も定かではない。ルベーグというのがルベーグ積分の創始者となった数学者の名前だということすら知らなかった。おどろおどろしいイメージだけが、何やら難解なものとして心に暗く残っている。
今更ルベーグ積分を知らなくても生きていけるわけだが、確率統計は今風に学ぶには測度論から入る必要があって、測度論はニアリーイコール、ルベーグ積分らしいというのをネットのどこかで読んだので、ルベーグ積分って一体なんだったんだろうと気になりだした。
知らなくてもこまらないけど、既存の概念を抽象化、拡張する数学の作法には感心するところがあって、今までとは違う見方を与えてもらえるとい点が、自分が数学の教科書を捨てられない理由でもある。
解析概論
高木定治『解析概論』第9章 Lesbesgue積分
うちの自分の本棚にルベーグ積分の載った数学の教科書はさすがにないよなと思いつつ、見渡して、高木定治『解析概論』を手にとって目次を見たら、なんと最後の章(第9章)がルベーグ積分だった。高木定治『解析概論』は、杉浦光夫『解析入門』と比べると、はるかに読者思いである。読者思いというか、授業で学生に語り掛ける口調で読み易い。
測度と積分
ツァピンスキ&コップ『測度と積分 入門から確率論へ』培風館 2008年7月10日初版
とてもわかりやすいと思いました。最後のチャプターが確率論の話で、そこまでの橋渡しみたいな内容です。勉強するモチベーションを与え方がうまいと思います。こんないい本が絶版だとは。自分は図書館から借りて読んでいるのですが、復刊させてほしいものです。
ツァピンスキ&コップ『測度と積分 入門から確率論へ』(別記事)
ルベグ積分入門
吉田洋一『ルベグ積分入門』
図書館で借りてみたんだけど、昭和40年1月20日初版発行だった。すごく古い本なんだけど、説明の仕方はかなり斬新。第一章は序説として、この本全体で何をどういう順序で説明していきたいかを述べてある。数学の本はえてして、森に入った瞬間に、木を見て森を見ず状態に迷い込んでしまい、忍耐が持たない。この本は森をしっかりと最初に見せてくれるところが凄い。読者に理解させたいという気持ちで、構成を練りに練った感がある。第一章では、リーマン積分の何が不満なのかがしっかりと述べてあり、ルベーグ積分を学ぶ動機付けをしっかりとやってくれる。自分が観ているのは培風館からの出版で、今はちくま学芸文庫から出ているが、何しろ古い本なので説明も古いのかと思ったらそんなことはなかったのが嬉しい誤算。初学者にわかりやすく説明する熱意を感じる。例えば、第二章では集合論を復習しているのだが、
例1.{a}. これはaなる元ただ一つから成る集合である。ただ一つしか元をもたない集合というと変に聞こえるが、こういうものも集合として扱う方が便利なのである。
と解説されていて、初心者の素朴な疑問をしっかりとフォローしてくれているのが嬉しい。要所要所で言葉を惜しみなくつかって説明してくれているので、実に読み易い。ルベーグ積分という高尚なトピックの本なのに、こんな初歩レベルのことでもこの気遣いがあるのが素晴らしいと思った。この本よりわかりやすく説明した教科書ってあるのかなと思えるくらいに、この本はわかりやすく書こうという心遣いが感じられる。
ルベーグ積分30講
志賀 浩二『ルベーグ積分30講』 (数学30講シリーズ)1990/9/20 朝倉書店
アマゾンのレビューを読んだところ、伊藤清三『ルベーグ積分入門』よりも初心者向けで分かりやすく書かれているとのこと。数学30講シリーズは他の本を持っているが、優しい口調で数学の講義が受けられる。
ルベーグ積分入門
伊藤清三『ルベーグ積分入門』
定番で標準的でよく推薦書として名の挙がる教科書。
積分・長さおよび面積
ルベーグ積分の教科書として、読むべきなのが実は、ルベーグ本人が書いた博士論文です。ルベーグ 『積分・長さおよび面積』 (現代数学の系譜 3) 1969/10/25発売。(amazon)
なにしろルベーグの博士論文は、ルベーグ積分そのものなのですから。ルベーグの博士論文審査の内容がルベーグ積分で、ルベーグの学位審査した教授がポアンカレとか、もうこの時代のフランスの数学のレベルは凄すぎます。
ルベーグ積分講義
新井 仁之『ルベーグ積分講義―ルベーグ積分と面積0の不思議な図形たち 』2003/1/1 日本評論社
著者の講義がYOUTUBEの動画で視聴できる。
イメージがわかるルベーグ測度入門(ルベーグ測度の意味徹底解剖) – ルベーグ測度とルベーグ積分 第1講.企画・制作 新井仁之 Feb 11, 2021 Hitoshi Arai, 数理科学デジタルオープンレクチャーズ