”近代光学の父”イブン・アルハイサム(Ibn al-Haitham)の業績

「科学者の目的が真実を知ることなのであれば、読んだもの全てを敵にまわさなければならない」とイブン・アルハイサムは言ったそうです。科学者たるものは、書物から得られる知識を盲目的に信じるのではなく、自分の手で全てを確かめてから信じるようにしなさいということです。古くから信じられてきたことを鵜呑みにせずに、自分で実験を行い、実験的証拠に基づいて真実を追究しようとする姿勢はまさに今日でいう科学そのものであり、西洋で近代科学が発展するよりもずっと前にすでにこのような科学的態度が確立されていたということになります。

イブン・アルハイサム(965年-1040年)は(現在の)イラクの都市バスラで生まれバグダッドで科学を学びました。光学の分野で大きな業績を残しており近代光学の父とみなされています。数多くの実験を行ってそこから帰納法的な推論を用いて理論を作る彼の方法は、その後の科学研究のあり方に大きな影響を与えました。主著『Kitab al-Manazir』(光学の書)はラテン語に訳されロジャー・ベーコンやヨハネス・ケプラーなど多くの西洋の科学者に影響を与えました。

イブン・アルハイサムの業績

  1. カメラ・オブスクラ(camera obscura)を発案
  2. 光がさまざまな媒質を通る際の進行方向の変化について実験を行い、屈折に関する法則を発見
  3. 光を構成するさまざまな色を分解する実験
  4. 日没の際の日光の色についても研究
  5. 影、日食、虹など幅広い物理現象を解明する理論
  6. 日の出・日没時に水平線上にある太陽がなぜ見かけ上大きくなったように見えるかの解説
  7. 人間の眼の各部分について正確な描写を行い、視覚のプロセスに科学的説明を与え、双眼視(立体視)の仕組みについても解明を試みた
  8. 眼から発する放射物によって物が見えるという先人たちの理論とは反対の立場に立ち、物の放つ光を受けて眼の中に像が結ばれると考えた
  9. 物の放つ光は眼の中を頂点とする円錐形をなすと推論
  10. 視覚は脳の中で認識されると考え、人間の認識・記憶・感覚・感情などに関しても論考
  11. 反射光学(catoptrics)に関する研究は球面鏡や放物線状の鏡を使い球面収差を調べた
  12. 屈折と光の入射角の比率は一定ではないという観測
  13. レンズがものを拡大して見せる仕組みを研究
  14. 反射光学研究は「アルハーゼンの問題」(アルハゼンの定理)という重要な数学上の問い。これは円形の平面において二つの点から引いた線が円周上のある点で合わさり、その点での垂直線によって等しい角度をなす場合を求めるもの。
  15. 『光学の書』では、大気の密度が標高に関係していることについて議論
  16. 大気中での光の屈折についても研究
  17. 日の出前の薄明や日没後の薄暮は、太陽が水平線の下19度の位置にある部分から上で起こる事を発見し、これに基づき大気の高さを計測しようとした。
  18. 物の動きの研究を行い、運動は外からの力で止められるか運動の方向を変えられない限り永久に続くと主張

 

Ibn Al-Haytham (Alhazen) – Father of the Modern Scientific Methodology | by Jim

参考文献、ウェブサイト

  1. イブン・ハイサム (ウィキペディア)
  2. Ibn Al-Haytham and the Legacy of Arabic Optics (International Year of Light 2015)