ハイネ=ボレルの被覆定理(ボレル=ルベーグの被覆定理)

ハイネ=ボレルの被覆定理は、ボレル=ルベーグの被覆定理とも呼ばれます。(参照:吉田洋一 ルベグ積分入門)

ハイネ=ボレルの被覆定理

閉集合Eのどんな開被覆も有限な部分被覆を持つ

どんな開被覆を与えられたとしても、そこから有限個の集合をうまく抜き出すことができて、その有限個の集合だけで被覆を構成できるというわけです。
上では言葉だけで済ませていますが、式と日本語とで書くと、

Borel=Lebesgueの被覆定理
有界閉集合Fと、Fの開被覆{$G_λ$|$λ\in{Λ}$}があるとき、{$G_λ$|$λ\in{Λ}$}の中から有限個の$G_λ$を選んで、Fの有限被覆をつくることができる。

となります。

ここで、「閉集合」、「被覆」、「開被覆」、「部分被覆」といった言葉が出てきました。これらの意味がわからないとどうしようもないわけですが。

被覆

被覆というのは、集合Xの部分集合だけからなる要素を持つ、Xの部分集合族$\mathcal{U}$と、Xの部分集合であるEがあったときに、Eのどの要素も、集合Uに属するある集合の要素となっているときに、$\mathcal{U}$はEの被覆であると言うのだそうです。こういうと抽象的でわかりにくいですが、例えば、具体的に平面(集合X)で考えると、ある形(領域)をEとして、その領域を、「重なり合う複数の円盤」(部分集合族$\mathcal{U}$)で覆いつくされている状態を考えると理解しやすいです。まさに被覆されているイメージ。

部分被覆

集合Eの被覆$\mathcal{U}$の部分被覆とは、$\mathcal{U}$の部分集合であって、それだけでの被覆になっているもののこと。

開被覆

開被覆というのは、集合Eの被覆である集合族$\mathcal{U}$のメンバーがすべてXの開集合である場合に、そう呼ばれます。じゃあ「開集合」って何をいうことになるんですが。

結局、数学は最初から始めて組み立てていかないと、途中から理解しようとしても、どんどん最初に戻っていくだけですね。

コンパクト

『「集合と位相」をなぜ学ぶのか』のハイネーボレルの定理の説明のところに、ハイネーボレルの定理というのはつまりは、実数の閉区間はコンパクトであるという主張ですよと解説されていて、コンパクトの定義も解説されていました。いわく、位相空間Xの部分集合Eがコンパクトであるとは、Eのどんな開被覆も有限な部分被覆を持つということである、とのこと。「有限な部分被覆」とかわかりにくい言葉ですが、この教科書には上のような日常用語への言い換えがあったので、意味はそう捉えれば良いのだと思います。

コンパクトという言葉は、大学1年の最初数学の授業であった「解析」の最初のほうに出てきたように思います。なんのことかよくわからないままにしていましたが、何十年ぶりかに再びこうして出会いました。

参考図書

  1. 藤田博司『「集合と位相」をなぜ学ぶのか』技術評論社