電磁気学の基本法則はマクスウェルの方程式(4つの方程式のセット)ですが、教科書のスタイルとしてマクスウェルの方程式に最後にたどりつくものと、マクスウェルの方程式から始めるものとがあります。力学の教科書ならニュートンの運動方程式が出発点ですが、電磁気学の場合はマクスウェルの方程式は数式としては簡潔でも初学者にはその数学的な意味はわかりにくいと思います。なので1冊目の初めて読む電磁気学の教科書はやはり最後にマクスウェルの方程式にまとめあげるというスタイルがおすすめです。そのほうが、歴史的な経緯にも合います。
兵頭 俊夫 電磁気学
兵頭 俊夫『電磁気学 増補修訂版』 (裳華房テキストシリーズ‐物理学)
自分が図書館にある日本人が書いた電磁気学の教科書を10冊くらいパラパラと見た中で、ダントツでわかりやすいと思ったのが、この教科書でした。レイアウトがすっきりしていて、図もおおきく、電磁気学の理解に必要な物理数学に最初のページがある程度割かれていて、親切だと思います。同じような説明図でも、砂川の教科書の小さなページの中のずと、この本の比較的大きく描かれた図とでは頭の中への入ってきやすさが全然違います。レイアウトなども含めて、解説の日本語の平易さなども併せて、この本は取り組む気が起きる教科書だと思いました。増補修訂版は2021年と最近の改訂で、一段と充実した印象があります。
高校で物理をやってこなかった学生が多くなってきた年代(1999年)に書かれた教科書なので、もともとわかりやすさに関してはかなり配慮された書き方なんだと思います。
全反射高速陽電子回折法による結晶表面の構造決定 兵頭俊夫 日本物理学会 チャンネル登録者数 3070人
グリフィス 電磁気学I,II
グリフィスの電磁気学はアメリカの標準的な教科書として絶大な人気を誇っているようです。 なにしろ、アマゾンでDavid J. Griffiths のIntroduction to Electrodynamics を見てみると、1440個ものレビューがついていて、76%が星5個をつけています。日本語訳は東京理科大学の先生方の手によるもので、理科大の物理学科ではグリフィスをつかって授業をやっているようです。日本語版が出たのはわりと最近で、2019/12/11です。自分が誰か初学者の人に電磁気学の教科書を一冊勧めるとしたら、迷わずグリフィスです。問題の答えは掲載されていませんが、ネットに転がっているみたい。
- https://www.physicsisbeautiful.com/resources/introduction-to-electrodynamics/MJEiSTyXEUcfVXXsVLrpfX/
第1章はベクトルとベクトルの計算の話。数学的な準備を先に終わらせておくという進め方なんですが、ここで躓きそう。慣れるしかないですね。避けて通ることはできません。電磁気学の話が始まるのは第2章からです。
砂川 重信 電磁気学
砂川 重信『電磁気学』岩波書店の物理学の教科書のシリーズの中の一巻。1987年1月29日刊行。標準的な大学の電磁気学の教科書だと思います。自分も買いましたが、読んでません。自分には難解でした。無味乾燥に議論が進む印象で、理解力のない学生相手に手取り足取りというタイプの本ではありません。
砂川 重信『電磁気学 演習』同じシリーズの中に演習書もあり、この演習書の中で同シリーズのテキストのページを言及して説明されていますので、2冊はセットで考えたほうがよいです。問題数は150題くらいで、必要十分な量、質なので他の問題集をやる必要はないと、前書きで高らかに宣言しています。
砂川の電磁気学はおそらくアマゾンで一番評価が高いのではないでしょうか。
高橋 秀俊 電磁気学
高橋 秀俊『電磁気学』 (物理学選書 3) 1959/5/25 アマゾンのレビューによれば、工学的な応用にかなり手厚い説明がありそれが大きな特徴となっている教科書だそうです。
ファインマン物理学
ファインマン物理学〈3〉電磁気学 1986/1/8
いわずとしれたファインマンの教科書。ファインマンの教科書は、べらべらとおしゃべりの口調で書かれていて、授業を聴いているような楽しさがあります。
R. Shankar
Fundamentals of Physics II: Electromagnetism, Optics, and Quantum Mechanics (The Open Yale Courses Series) 2020/5/19 R. Shankar
イェール大学のオープンコースがYOUTUBEで視聴できますが、それの書籍版です。シャンカー教授の語り口がそのまま活字になっており、読む講義です。とにかくわかりやすく説明する能力が凄いと思います。
1. Electrostatics YaleCourses チャンネル登録者数 142万人
太田 浩一 電磁気学の基礎
太田 浩一 電磁気学の基礎〈1〉東京大学出版会2012年3月1日
太田 浩一 電磁気学の基礎〈2〉東京大学出版会2012年3月1日
この本のスタイルは電磁気学の研究の歴史をたどって、電磁気学をつくりあげるもので、第1巻では最後にマクスウェルの方程式に辿り着くという進め方みたいです。
遠藤雅守 電磁気学-はじめて学ぶ電磁場理論
ツイッターで、遠藤雅守 著『電磁気学-はじめて学ぶ電磁場理論』’森北出版2013年4月17日刊行) という本を知りました。
ダークホース的な本ですが、
「電磁気学-はじめて学ぶ電磁場理論」(遠藤雅守 著)-森北出版-
のベクトルポテンシャルの項目は分かりやすい説明ではないかと思います。 pic.twitter.com/4oWO3sPn9Q— enshot (@enshot) September 5, 2021
この本は分かりやすいそう。
ネットを見ていたら、
神即自然の必然性理論物理学の脱商品化 http://everything-arises-from-the-principle-of-physics.com/ というサイトがあり、世の中の教科書に沿ったノートがPDF化されていました。その教科書を読み進めるための補足ノートみたいな位置づけなのかと思います。山本 義隆『新・物理入門』も取り上げられていて、電磁気学の章は、第5.0章(133ページ~144ページ)が付け足されており、マクスウェルの方程式の説明がありました。このウェブサイトの作者により「補筆」(?)されたこの第5.0章の12ページにわたる解説が、電磁気学の速習コースになっていて非常にわかりやすいと自分は感じました。