集合論の講義ノートを読んでいて、集合の濃度というものの定義の説明を読んだのですが、
集合Aから集合Bへの全単射が存在するとき、AとBは濃度が等しいといい、|A|=|B|と書く。
とのことでした。この定義では、濃度そのものが一体何であるのかは定義しておらず、濃度が等しいとはどういうことかだけ定義しています。なんだか気持ちの悪い定義です。でも、どの数学の講義ノートを見てもそう書いているので、そう受け入れるしかなさそう。気持ち÷さの原因は何だろうと思っていたのですが、数ではない濃度というものに関して、数で使う等号を当てているからかと思い当たりました。
下の講義録がとても初学者思いで、丁寧な説明です。
定義. 2 つの集合 A, B の間に全単射が存在するとき,A と B は互いに対等である (equipotent) といったり,A と B の濃度が等しい (A has the same cardinality as B) という.またこのとき |A| = |B| と書く.
A や B が無限集合である場合には,われわれの⽴場では,|A|, |B| といった記号は単独では意味を持たず,|A| = |B| とか |A| ̸= |B| という主張にのみ意味が存在するのである.
集合の「⼤きさが等しい」ことに相当する関係を定めるだけでなく,⼤⼩の⽐較も⾏いたい.すでに⾒たように,A ⊊ B であっても |A| = |B| となる場合があるから,A ⊊ B のとき |A| < |B| であるとするのは不適切だ(|A| = |B| と |A| < |B| の両⽅が成⽴するのは気持ちが悪い).けれども,「A ⊂ B のとき,B の濃度は A の濃度以上である」と考えるのは許されるのではないか.もっと⼀般に,単射 f : A → B が存在するとする.そのとき,f′: A → f(A), f′(a) = f(a) とおけば f′は全単射で,つまり |A| = |f(A)| であるから,B の濃度が f(A) の濃度以上だと考えるのならば,B の濃度は A の濃度以上でもあると考えるべきだろう.以上を念頭において,次のように定義する.
定義. 2 つの集合 A, B に対し,A から B への単射が存在するとき,B の濃度は A の濃度以上であるといい,|A| ≤ |B| と表す: |A| ≤ |B| ⇔ 単射 f : A → B が存在する. (2.3)
また,B の濃度が A の濃度以上であって,しかも A と B が対等でないとき,B の濃度は A の濃度より大きいといい,|A| < |B| と表す:|A| < |B| ⇔ |A| ≤ |B| かつ |A| ̸= |B|.引用元:http://www4.math.sci.osaka-u.ac.jp/~matsumoto/courses/2016-fs2/docs/2016-fs2-B-mod-20161027.pdf 2016年度2学期 数学の楽しみ2D 担当:松本佳彦 大阪大学
とてもわかりやすいです。注意書きとか、どのように定義するのかのモチベーションとか、新しい概念を受け入れやすいような説明の工夫が嬉しい。
濃度の定義
- 有限集合 の濃度 は の要素数とする。
- から への全単射(一対一対応)がある場合(またそのときに限って)|A|=|B| とする。
- 集合 から への単射が存在するとき, とする
(引用元:集合の濃度と可算無限・非可算無限 2021/03/07 高校数学の美しい物語)
他のサイトをあたってみましたが、やはり等号が使われています。
集合 X から集合 Y への全単射 ϕ:X → Y が存在するとき X と Y は濃
度が等しいといい,X ∼ Y と書く.(引用元:http://www.f.waseda.jp/moriya/books/DM/sec1.3.1.pdf 情報系のための数学-1 『離散数学入門』 守屋悦朗著/サイエンス社 2006年6月10日 出版)
上の説明だと、等号を使わずに別の記号を当てています。これのほうが気持ち的には受け入れやすいですね。
| X | = | Y | ⇔ X ≈ Yが常に成り立つような 集合への数学的対象の割り当てを濃度といい、濃度として割り当てられる数学的対象を基数という(濃度 | X | は card(X), #X などとも表記される)。(ウィキペディア)
ウィキペディアの説明をみると、| X | = | Y | ⇔ X ≈ Y と、これら2つが同値だから、等号を使ってもOKだよねということみたいです。しかし、「数学的対象の割り当て」とか「数学的対象 基数」って何なのかよくわかりません。
集合の濃度をわかりやすく丁寧に2021.10.06 数学の景色
に濃度の概念や定義の説明がありましたが、めちゃくちゃ分かりやすい。「有限個の集合の大小は数を知らない赤ちゃんでもわかる」の説明は、とてもしっくりきました。説明、うますぎ。
1対1・上への写像を使えば、たとえ”数える”ということを知らない人でも、個数が等しいかどうかを判断できる。”なんと便利なものだろう~!!”とは、しかし思わないだろう。数えることを知らない人などいないのだし。ところが、数えることを知っていても数え上げることができない場合はどうだろう。そんな場合があるのか?、ある、それは元の個数が無限である無限集合の場合である。(引用元:sun.ac.jp/prof/hnagano/ 永野研究室 長崎県立大学)
この説明も、同じ説明方法なのだがやはりとてもわかりやすい。
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