『高校数学でわかる マクスウェル方程式』 (ブルーバックスB1383 竹内淳 著、講談社 2002年)

『高校数学でわかる マクスウェル方程式』は、第1部で、高校の物理で学ぶ電磁気学をおさらいして、第2部で、大学の物理で多くの学生が落ちこぼれる(?)マクスウェルの方程式への橋渡しをするように書かれています。高校数学でわかるというタイトルが示すように、読者対象は高校生から一般の大人までですが、やたらと法則、方程式が出てくる高校の電磁気学が歴史の流れに則ってすっきりと整理されており、高校生の物理の副読本としてもお勧めです。

本書で紹介されている内容の年代順のまとめ

  • 1663年 エレキテルの原形が発明
  • 1684年 ニュートンの万有引力(2つの物体の間に働く万有引力の大きさは、2つの物体の距離の2乗に反比例する)
  • 1749年 フランスのパリで、フランスの科学者がベンジャミン・フランクリンの論文に従って、雷が電気であることの証明実験に成功。
  • 1751年 オランダ人が江戸幕府にエレキテルを献上
  • 1770年 平賀源内(1728~1779)が2度目の長崎留学。エレキテルを入手し、研究。
  • 1784年 クーロンが、微小な力を測定できる「ねじればかり」を発明。Recherches théoriques et expérimentales sur la force de torsion et sur l’élasticité des fils de metal (Theoretical research and experimentation on torsion and the elasticity of metal wire)
  • 1785年 クーロンの法則(帯電した2つの物体の間に働くクーロン力の大きさは、2つの物体の距離の2乗に反比例する)。および、磁荷に関する同様の法則。クーロンは近接作用を提案。
  • 1790年頃 イタリアの生理学者ガルバーニがカエルの筋肉の収縮を研究
  • 1800年 ボルタが電池を発明。電気分解の発見。
  • 1813年 デービーが製本職人だったマイケル・ファラデーを実験助手として採用
  • 1820年 エルステッドが電流の磁気作用を発見
  • 1820年 アンペールの法則の発見。アンペールが論文「二種の電流の相互作用」(Memoires sur I’Action mutuelle de deux courans electriques.)を発表。
  • 1820年 ビオ=サバールの法則
  • 1827年 アンペールが論文「実験だけから導かれる電気力学的諸現象の数学的理論」を発表
  • 1831年 ファラデーが電磁誘導の法則を発見
  • 1864年 マクスウェルの20の方程式
  • 1880年代 マイケルソンとモーリーがエーテルの存在の検証実験
  • 1884年 マクスウェルの4つの方程式
  • 1888年 ヘルツによる電磁波の実験(近接作用の仮説を支持)。

 

 

この本を読んでいて、話の進め方、説明の仕方がわかりやすくてうまいなあと感心してしまいました。高校の勉強から大学の勉強に入るところでそのギャップの大きさに戸惑って結局そのギャップを越えられずに終わってしまう学生もいるかと思いますが、そういう人にお勧めの本です。他の分野の勉強もこのシリーズで。

  1. 高校数学でわかる光とレンズ 光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで (ブルーバックス)2016
  2. 高校数学でわかる流体力学 (ブルーバックス) 2014
  3. 高校数学でわかる相対性理論 (ブルーバックス) 2013
  4. 高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで (ブルーバックス) 2010
  5. 高校数学でわかるフーリエ変換―フーリエ級数からラプラス変換まで (ブルーバックス)2009
  6. 高校数学でわかるボルツマンの原理―熱力学と統計力学を理解しよう (ブルーバックス)2008
  7. 高校数学でわかる半導体の原理―電子の動きを知って理解しよう (ブルーバックス)2007
  8. 高校数学でわかるシュレディンガー方程式―量子力学を学びたい人、ほんとうに理解したい人へ (ブルーバックス)2005
  9. 高校数学でわかるマクスウェル方程式 (ブルーバックス) 2002

 

参考ウェブサイト

  1. Charles-Augustin de Coulomb (Wikipedia)
  2. Charles-Augustin de Coulomb (Magnet Academy)
  3. 1864年のマクスウェル原方程式について
  4. A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field (Wikipedia)
  5. http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/182001.html
  6. https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/denki/ampere.html
  7. http://www.weblio.jp/content/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%AB?edc=DKIJT