自分が数学で躓いた理由

自分は数学がからっきし苦手です。なぜ苦手なのか、考えてみました。いつ数学に躓いたのかは非常に明確で、高校1年のときの一番最初の授業でした。中学の先生とは全く異なり、高校の先生は生徒が聴いていようが聞いていなかろうが、授業内容を理解していようがいまいが、たんたんと説明して先へ先へと進んでいきます。あまりにも面白くなくて、ほどなくして深い眠りに落ちてしまいました。トンネルを抜けると雪国だったではないですが、ぐっすり眠って目が覚めたときには、先生がしゃべっている数学の内容がもはや何も理解できないくらいの場所にいました。

高校1年のときは、数学Iという単元だったのですが、数学1は、高校数学全体の基礎をなす部分です。最初の授業で居眠りをしたせいで、高校1年生の1年間、数学の授業が全く理解できないまま過ぎてしまいました。

数学①の先生は体育系の性格で、ぜんぜん数学の先生らしくなかったのも禍しました。だからこそ、あんなくそ面白くない授業をやっていたのだろうと今ならわかります。唯一自分の記憶にあるのは、授業チャイムが鳴ったときに教科書を出して席についていなかった5~6人が前に集められて、全員がこの数学の先生からビンタを顔にくらったこと。正直、屈辱感と怒りで自分は打ち震えていましたが、それ以来、そうでなくても詰まらない授業なのに、全く聞く気が失せました。高校1年の数学の先生がもしもっと数学を愛していて数学の面白さを語り聞かせることに夢中になってくれるような先生であれば、自分の数学力はもう少しまともになったのではないかと思います。

高校2年のときの数学の先生は、戦時中にメーカーで戦闘機を設計していたというおじいちゃん先生と、もう一人は数学が楽しくて自分の世界に没頭して宙をみながらしゃべっているような先生でした。そんな二人の数学の先生に三角関数と行列をそれぞれ習ったので、高校2年のときの数学の授業は割と好きでした。

高校3年で数3の微分積分があったと思いますが、授業中はちんぷんかんぷんで理解できたことはほぼゼロ、理解できないのでつまらない、つまらないので眠くなる、でずっと授業中は寝ていました。一番前の席でも平気で突っ伏して寝ていたので、先生にしてみたらいやだったろうと思います。そうやって完全に授業中に寝ている生徒は、クラスに3人くらいいたと思います。

授業が全然理解できていなくても、定期テストの時期はやってきます。合成関数の微分とか、試験前夜、夜中の2時まで必死で教科書をその章の最初からじっくり読んで、定義と簡単な例題の計算だけはできるようになったような記憶があります。それでも、テストで問題がそうそう解けるはずもなく、高校3年の数学のテストは赤点でした。100点満点のテストなのに10点台だったように記憶しています。

大学受験のときは、数学のできはさんざんで当然のように浪人しました。浪人して予備校に行きましたが、予備校は3学期制で、1学期は高校3年間の総復習にあてられ、1学期を終えたときに高校3年間でこんなことを勉強していたのかと、全体像が俯瞰できたような気がしました。

1年浪人して数学の力は多少は上がりましたが(予備校の内部の偏差値が50⇒55くらいだったと思う)、大しては上がりませんでした。2次試験は結局歯が立たず。数学で点が取れなかった分は得意科目だった英語で埋め合わせをして、なんとか志望する大学には入れました。

大学の数学の授業も当然ちんぷんかんぷんで、ほとんど何も学べなかったように思います。だからといって単位を落としたのかというとそうでもなくて、非常に不思議なことなのですが、大学の定期テストの問題は高校の知識だけでなんとか解けるような優しい問題が混じっていたような気がして、零点は取らずにすんで、成績は悪かったですが単位は落とさずに卒業はできました。

振り返ってみると、高校1年での数学の躓きが自分の人生を決めてしまったように思います。数学の楽しみを伝えてくれるような先生に、数学を習いたかったかな。中学までの数学は、公立でレベルが高くもなかったので、全然困ったことはありませんでした。小学校、中学校では算数や数学のテストは100点以外はとったことがなかったのに、高校に入った瞬間、何も理解できずクラスの平均点を超えることは一度もありませんでした。今から考えると数学で躓いたというよりも、中学の熱血先生と、高校の淡泊な先生との落差に戸惑いを覚えて、そのギャップに対応できないまま高校時代が過ぎてしまったのが、最大の敗因だったという気がします。中学の授業では大事な内容は先生が5回も6回も繰り返ししゃべっていたので、べらべらと友達と授業中におしゃべりしていても、自然と頭に入ってきて定着したのです。それに対して、高校の先生は大事なことでも一度しか説明せずひたすら教科書の内容を先へ先への進めていきました。自分は家で予習や復習をする習慣が皆無だったので、授業に落ちこぼれたからといって家でフォローするという発想が全くなくて、ひたすらわからない状態が続いてしまいました。

自分で勉強する習慣って大事だなと今さらながらに思います。

数学に躓いた時期が高1のときというのは間違いないのですが、浪人して数学の勉強を頑張ったのに結局はできるようにならなかったので、やはりもともと数学の才能がなかったのかなとも思います。物理の教科書を読んだりしても、だいたい1行目の数式で躓きます。なので、理数系の教科書は、前書きくらいしか読める場所がありません。その教科書が前提としている数学の予備知識が足りて居ないことが原因と思われますが、一体どこまでさかのぼればいいのでしょうか。

高校数学で躓いた場所がどこかというと、今でも覚えているのは、(a+b)^2 = a^2 + 2ab + b^2という公式で、bに-bを代入して、(a-b)^2 = a^2 -2ab +b^2 としたとき。高校の先生は、これが気持ち割るければ、b = -b’とすればいいと言っていましたが、bに-bを入れることも、bに-b’を入れることもどちらも自分はしっくりきませんでした。絶対値が入った不等式、例えば |a|<1 の絶対値を外す問題も、全然わかりませんでした。それどころか、ベクトルの導入のところで、東にマイナス4kmみたいな言い方が出てきたときも、ピンとこなくて、受け入れられずにいました。大学入試問題に取り組むようになってからも、方程式を立てて解いているつもりが、なぜか 0=0になってしまい、実は恒等式を立てていたに過ぎなかったという苦い思い出もあります。あれはなぜそうなったのか、今となっては問題を覚えていないので、取りかえしようがありません。必要性、十分性の証明も、いまいち自信がありません。

一番情けないのは、文系の人でも満点が当たり前と言われていた(当時は)共通一次試験で自分は解けない問題があったことです。時間はあと10分程度あまっていたのですが、3乗根を求める問題だったような気がしますが、解けずに考えているあいだにタイムアップになりました。今なら解けるんだろうか?やはり無理かな。そんな学力だったので、二次試験の問題も、完答ゼロでした。