寺山修二は有名で名前はよく聞いていたし、『書を捨てよ、町へ出よう』という本のタイトルも強烈な印象を自分に与えていた。しかし、今日の今日まで読んだことは無かった。なんとなく読んでみようという気になって、角川文庫のこの本を買って読んで、驚いた。小説かなにかかなくらいにしか思っていなかったので、本当に中身に関する事前情報がなかった。福袋を買ってみたようなものである。
昭和50年(1975年)の作品である。出てくる芸能人や野球選手は当時の人たちで、今の若い人はきっと知らない人が多いであろう。しかし、メッセージは古くない。人間の中身や、社会が抱える矛盾、人生の葛藤は普遍的だから。
今の時代にこんな過激な表現で世に向けて発信したら、大炎上して袋叩きにされるんじゃないかと思う。本の末尾には、
本書中には、今日の人権擁護の見地に照らして、不当・不適切と思われる語句や表現がありますが、作品発表時の時代的背景を考え合わせ、著作権継承者の了解を得た上で、一部を編集部の責任において改めるにとどめました。(平成四年三月)
という但し書きがある。一部とはいえ改められた箇所があるのなら、古書を探して読み直してみてもいいかもしれない。