要素(元)の個数が無限個ある無限集合は、個数が数えられません。しかしそんな無限集合に対して、「個数」を拡張した概念である「濃度」を考えることができます。この濃度という概念ですが、有限集合の要素の個数の常識が通用しません。
連続体仮説とは
自然数の濃度と、実数の濃度は異なるわけですが、じゃあその間の大きさの濃度を持つものはあるのでしょうか。そのようなものは存在しないと予想したのが、濃度という概念を導入したカントール(1845-1918)です。この予想は連続体仮説として有名です。
1940年にゲーデルが、連続体仮説をZFC公理系に加えても矛盾が生じないことを証明しました。
Kurt Gödel. The Consistency of the Continuum Hypothesis. Princeton University Press (1940)
コーエン(April 2, 1934-March 23, 2007)が、1963年~1964年の論文で、強制法(forcing)という手法により、連続体仮説の否定をZFC公理系に加えても矛盾が生じないことを証明しました。
Paul J. Cohen. The Independence of the Continuum Hypothesis. PNAS December 1, 1963 50 (6) 1143-1148; https://doi.org/10.1073/pnas.50.6.1143
Paul Cohen. The Independence of the Continuum Hypothesis II. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 1964 Jan; 51 (1):105-110. doi: 10.1073/pnas.51.1.105
1966年にコーエンはフィールズ賞を受賞しています。
Paul J. Cohen. Set Theory and the Continuum Hypothesis. 1966. New York: W. A. Benjamin.
連続体仮説は正しいとも正しくないとも言えないという、なんとも不思議な結末になったのですね。
連続体仮説のわかりやすい説明
- 連続体仮説とゲーデルの集合論的宇宙 ユニヴァース 渕野昌(Saka´e Fuchino)(42ページPDF)
- “コーエンの強制法” と強制法 渕野 昌(15ページPDF)
- P11 【連続体仮説】の意外な結末
連続体仮説の本
アミール・D・ アクゼル 「無限」に魅入られた天才数学者たち
連続体仮説に関する学術的な記事
- 連続体仮説と数学 渕野 昌 (Saka´e Fuchino)
連続体仮説と機械学習
ネイチャーの姉妹紙Nature Machine Intelligenceに、Learnability can be undecidableという論文が発表されて、話題になったようです。
- Learnability can be undecidable Published: 07 January 2019
- サイエンス 機械学習によって解決できるかどうかが証明不可能な学習モデルが発見される 2019年01月10日 08時00分 GIGAZINE
- 機械学習と連続体仮説。純粋数学が何に応用されるか誰にも予測できない 2019-01-12