発明・アイデア成功マニュアル―だれでもできる! (アマゾン) 内山 ともや, 溝邉 大介, 高田 歳三 著, 発明学会 編集 2006年 中央経済社 236ページ
育児家事で忙しい主婦でも、仕事で忙しいサラリーマンでも、発想一つで一攫千金を狙えるのが、発明による商品化で、『発明・アイデア成功マニュアル』には、さまざまな事例が紹介されています。普通の主婦でも、ロイヤルティ収入が年に数百万円もあったりするそうです。サラリーマンをやりながら発明で巨額のお金を得る人、リストラされて、人生追い込まれたのがきっかけで発明家になった元サラリーマン、発明してお金を得たのでサラリーマンをやめた人など、人生それぞれです。
本書の前半は、具体的は発明の事例が紹介され、後半は具体的に企業に売り込むときの書類作成法、実際に企業をリストアップし、コンタクトをとり、売り込む際の手順、NGな行動などが、さまざまなアイデアとともに解説されています。
発明家になるための考え方
- 大企業も最初はたった一人の発明企業家(3ページ)
- 自分の身に丈にあった、ミニ発明に徹する(32ページ)
- 自分の知識や知恵の範囲内でできそうなものにとりくむ(108ページ)
- シンプルで一目みただけでわかるような商品のほうが売れるので、わかりやすい商品になるかどうかを常に確認(108ページ)
- コストがかからないように工夫する。構造の単純化、安い材料で同じ機能を実現、企業がすでに用いている材質の採用(110ページ)
- 「新規発明品」よりも、既存の商品を改良した「改良発明品」のほうが、企業が採用の判断を下しやすいので採用されやすいことがある(113ページ)
- 女性の求める永遠のテーマは「美」なのでダイエット、あるいは、生活していくうえで欠かせない「健康」などのテーマの商品は売れやすい(128ページ)
- 安心や癒しを与えるグッズも売れやすい(129ページ)
- なんでもできるものよりも、特化・限定することで売れやすくなることがある(129ページ)
本書で紹介されている発明
- スプーンをテーブルに置いたときに、スプーンの底がテーブルに付かない形状のスプーン(8ページ)
- 両手を使わずに赤ちゃんにミルクをあげられる「哺乳瓶保持具」(8ページ)
- 手の届かな風呂釜の内部を手軽に洗浄できる風呂釜クリーナ「バスポイト」特殊洗浄剤付き(9ページ)
- 大人用スリッパなのに普通の半分くらいの長さしかなくて、履くと土踏まずから後ろ半分がはみ出すので、かかとが宙に浮いた状態になり、つま先立ちで歩く格好になるので、背筋がスッと伸び、お腹がギュッと引き締まるので、毎日履いていれば姿勢が良くなりシェイプアップ効果も期待できる「初恋ダイエットスリッパ」(12ページ)
- 骨盤矯正用サポーター「ラクダーネ」とシェイプアップ用サポーター「肉取物語」(16ページ)
- 野鳥がタカやトンビのような猛禽類を恐れることを利用して、タカの模型をプラスチックで成型し、両目に鏡を埋め込んだ「鷹くん」(20ページ)
- 幼児のアセモの原因になる厚ぼったい涎掛けに代わる、バンダナ風のカッコいいよだれかけ「ベビーカウボーイ」(24ページ)
- 冷蔵庫の扉の内側に引っ掛けて、ねりチューブなどの小物類を収納できる「冷蔵庫ポケット」(26ページ)
- 冷蔵庫の仕切りにハンモックにようにぶら下げて、そこに板状のチーズや福神漬けなどの袋を収納する「冷蔵庫ハンモック」(110ページ)
- コンピュータ制御型駐輪場管理システム(28ページ)
- ビール瓶の形のマッチ箱、回転脚つきマッチ箱、簡易スタンド式マッチ箱、縦置き式STマッチ、貯金箱つきマッチ箱(32ページ) この発明者は、書籍も出版しています。ミニ発明で2億円つくる!!―超簡単サラリーマンでも定年後でも
- 逆V字型のゴム版により、挟みやすく抜きやすいメモクリップ(36ページ)
- ウインナーをしっかり保持してスムーズにカットできる「ウインナーカット」(40ページ)
- 動物をかたどった容器に生卵をいれて蓋をして茹でるとパンダや猫の顔をしたかわいい茹で玉子ができあがる「ゆで卵容器」(42ページ)
- 吸水高分子ポリマーの優れた保水力により冷却効果が約4時間も持続する、水に浸して装着することで気化熱により頭部を冷やせる「クールビット coolbit」(44ページ)
- ビート音を発するメトロノーム機能とリズム演奏を行うリズムマシン機能を備え、複数機同士で同期させることが可能な「ミュージシャン及びダンサー用電子時計」(50ページ)
- 泳者の腕や足の筋肉や水中における流れの抵抗力、推進力などを客観的に評価しトレーニングに有効活用できるようにした「泳者用トレーニング評価システム」(52ページ)
- マージャンの点数計算機「ジャンタック」(56ページ)
- 二股の急須(58ページ)
- 「洗濯機の糸くず除去具」(73ページ)
- 「ふぐ調理における不可食部分の食材利用法」(特許第2747790号)(75ページ)
- 円柱形にした鉛筆は転がりやすいので、転がりにくいように円形を6角形に。実用新案。(76ページ)
- 電子レンジで米からご飯が炊ける容器が販売当初良く売れたが、電子レンジで温めるだけで食べられる真空パックの調理済みご飯が登場したため売れれなくなってしまい、あきらめるのはもったいないので、”ソフトアイデア”として、ダイエット食品を作るための料理レシピを一緒につけて”ダイエット食品をつくるための容器”として再度販売したら再び売れた(126ページ)
発明によりお金を得る具体的な方法
- アイデアの権利化: 発明の場合は特許出願、デザインのアイデアの場合は意匠出願、ネーミングやサービスマークの場合は商標出願
- 特許をとるには、新規性を喪失していないことが必要。
- 権利化したアイデアは、他人の実施による模倣を法的に排除できるので、独占的実施ができる。
- 企業にアイデアを売り込む場合も、権利化されたアイデアであることが重要。
- 自分で事業化または、企業に譲渡(まるごと譲り渡す譲渡契約 または、 売上げに応じたインセンティヴを受け取るロイヤリティ契約)
特許の歴史
- 1474年:イタリアのベニス共和国で「発明者条例」。技術や工芸の発展を保護。世界最初の特許法とされる。
- エドワード3世の治世(イギリス):レターズ・パテントと呼ばれる特許状。外国人技術者でもイギリス国内で自由に営業する権利を保障し、産業を活性化。
- 1624年(イギリス):最初の発明に対してだけ特許を与える「専売特許条例」。現代の特許法の元祖とみなされる。
- 1775年: ジェームス・ワットは「専売特許条例」により蒸気機関の特許を取得し、その特許が25年間保護されたおかげで莫大な資産を形成した。
その他
- 知的財産権を保護する法律は大きく分けて2つ: 産業財産権法と著作権法。
- 産業財産権法は、発明、考案、意匠(デザイン)、商標(マーク、ネーミング)を保護。具体的には、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の4法。
- 著作権法の目的は、文芸、学術、美術、音楽等を保護することにより、文化の発展を促す。
- その他の関連する法律として、不正競争防止法、商法(商号)など。
- 発明の定義:「自然法則を利用した技術思想の捜索のうち高度のもの」(特許法2条)
- 実用新案か、特許か? 現在は、実用新案よりも特許への出願が圧倒的に多い。実用新案では、無審査制度が採用されていて企業が類似商品出現を牽制するなどの目的にしか使われておらず、発明家がアイデアを売り込むために活用するのには適さないので、発明やアイデアの権利性は、特許解消かで判断するのがよい(132ページ)
- 商標権は、永久権。更新さえすれば半永久的に存続。
発明の手順
- 「困った」「なんとかならないか」「こうなったらいいな」というニーズを拾うことにより、「こうやったらできる。」というアイデアを得る。
- アイデアを形にするために、試作してみる。試作の過程でさらなるアイデアが生まれることも多い。実現可能性もわかる。使い勝手もわかる。形にしておけば、人に試してもらうことができる。そもそも、本当に役立つかどうかがわかる。
- 試作品=商品でないので、材料などは代用でよい。企業に売り込むときは見た目が重要なので、試作品であっても、パテで角を埋めるとか、酸度ペーパーでけずって表面を滑らかにするとか、着色して素材のバラバラ感をなくすとかの工夫をしたほうがいい(124ページ)
- 客観的に評価する。使う立場で、良し悪し、改良できる点を探す。身近な信頼できる人に評価してもらう。類似商品、競合商品をチェックして、気づいた点を自分のアイデアに活かす。
- 商品そのものだけでなく、得るための工夫として”ソフトアイデア”も考える。(126ページ)
- 権利化する。出願書類の作成は弁理士に頼むと、出願だけで30~50万円程度の経費がかかる。そのため、個人発明家は、自分で書類の作成にチャレンジする人が多い。その場合の経費は2~3万円程度。発明学会などに相談することも可能。
- 権利を守るためには、粗悪類似品や改良された商品の出現を防ぐことも念頭に入れて申請書を作成する必要がある(133ページ)
- 申請書がわるくて権利が守られないと意味がないので、特許出願に詳しい人に相談することが大事。社団法人発明学会「体験相談」という一般向けの制度もある。
- 売り込み先企業をリストアップ。
- 名前をつける。商品の内容がわかり、言葉にしやすくて覚えられやすいネーミングが重要(たとえば、「通勤快足」という商品名の靴下(130ページ)
- 企画提案書を作成し、企業に提案する。試作品があることが重要。「挨拶文」、「企画提案用紙」、「返信書」の具体的な書き方(142ページ~)
- 企業と契約する。契約には種類があるので、選ぶ必要がある。譲渡契約は、権利自体を譲るもの。通常実施契約は、権利を保有したまま複数の企業に商品化実施契約を結ぶもの。専用実施契約は、一社に独占させるもの。この場合は発明者自身が商品の製造販売をする際も、専用実施権者の許諾が必要になる。
この本では、発明でお金を稼ごう!という主旨なのですが、その根底にあるのは、「発明の素晴らしさ」に対する気持ちです。そのことは、以下の文で伺えます。
試作のメリットを紹介してきましたが、なにりょりもこれらのメリットに勝るのは、自分が利用できるという点です。
そもそも、発明、アイデアを発想する原点は、自分の不便や不満を解決したいという目的であったはずです。こんなものがあったらいいなとk難じるのに、どこにいっても売っていない。他人には必要ではなくても、自分の本当にのぞむことを試作が実現してくれるのです。
すなわち、その試作品は、考えた人のためだけに存在する世界に一つのプレミアム商品といえるのではないでしょうか。しかも、自分の感性にピッタリあっているはずです。そんな商品に人生のなかでどれだけであえるでしょう。
カタログや店頭で面白そうだなと思って買った商品の、どれほどのものが現実に使い続けられているか考えてみてください。多くの商品が途中で使われなくなったり、捨てられているはずです。そんな商品と、自分の試作品を比較してみてください。多分、その試作品はどんな商品よりもすぐれていることに気づくと思います。
これだけでも、発明し試作した価値はあります。そして、その延長線上に、商品化、ロイヤリティ収入があるにすぎないのです。(121ページ)
このような心の態度を持っていれば、発明に意欲を持って持続的に取り組めそうです。
本書は、特に後半部分では、発明者が発明の権利を得て、企業の協力を得て商品化するまでに具体的に取るべき行動が説明されています。実際にやってみたい人にとっては心強い指南書になるでしょう。今まで普通の人生を歩んできた人を、経済的に成功する発明家に変えてしまう可能性を秘めたマニュアルと言えるでしょう。
発明・アイデア成功マニュアル―だれでもできる! (アマゾン) 内山 ともや, 溝邉 大介, 高田 歳三 著, 発明学会 編集 2006年 中央経済社 236ページ
参考ウェブサイト
- 発明学会
- 平成11年より提供してまいりました特許電子図書館ですが、平成27年3月20日(金)22時をもちまして、サービスを終了いたしました。… 今後は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」をご利用いただきますようお願いいたします。 http://www.inpit.go.jp/info/ipdl/end_of_service.html
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