小平邦彦 著『解析入門』は新装版が出ていますが、もともとは岩波講座 基礎数学のシリーズ全24巻80分冊の一部として刊行されています。
岩波講座 基礎数学 解析学(I) ii 解析入門I~IV(4分冊)
分冊にしたのは読みやすくするための配慮のようで、ひとつの分冊は百数十ページの薄さで、分冊をまたいでページ番号が通してつけられています。ウィキペディアの情報によれば、刊行年は1976年から1981年にかけて。その後2回目の発行が、1982年~1984年、3回目の発行が1987年~1989年に行われました。その後、岩波基礎数学選書(1990年-1991年)へと引き継がれ、さらに、今では『軽装版 解析入門〈1〉』、『 軽装版 解析入門〈2〉』として同じ内容が出版されているようです。
1982年の第2次発行の書籍の内容を確認してみます。
岩波講座 基礎数学 解析学(I) ii 解析入門I 1~128ページ 実数、関数、微分法
岩波講座 基礎数学 解析学(I) ii 解析入門II 129~260ページ 微分法、積分法、無限級数、多変数の関数
岩波講座 基礎数学 解析学(I) ii 解析入門III 261~386ページ 多変数の関数、積分法(多変数)
岩波講座 基礎数学 解析学(I) ii 解析入門IV 387~482ページ 積分法、曲線と曲面
この教科書がどのような趣旨で書かれたものかは、「はじめに」に説明されています。一部を紹介すると、
現代の数学は形式主義の影響を強く受けていて、数学は公理的に構成された論証の体系であるという点が強調されるが、私の見るところでは、数学は、物理学が物理的現象を記述しているのと同様な意味で、実在する数学的現象を記述しているのであって、数学を理解するにはその数学的現象の感覚的なイメージを明確に把握することが大切である。この解析入門執筆に当っては厳密なだけでなく感覚的に分かり易い叙述に努めた。
この第1分冊を書くに当って参考としたのは高木貞治先生の名著”解析概論”である。”解析概論”の影響は随所に見られると思う。
とあります。