夏目漱石の『吾輩は猫である』はホフマンの『牡猫ムルの人生観』の盗作なのか?!

巷でやたらと評判の良いホフマンの『牡猫ムルの人生観 ならびに楽長ヨハンネス・クライスラーの断片的な伝記』という小説をを手にしてみた。

  1. ホフマン『牡猫ムルの人生観 』上下全二冊 秋山 六郎兵衛 訳 1956年 岩波文庫

差し止められた序文という数行をとりあえず読んでみたのだが、この序文を読んで、これって夏目漱石の「吾輩は猫である」じゃん。ならもう読んだからいいわ。」という気持ちになって、本を放り出した。

漱石はこの本の影響を受けたんだろうなあと思い、みんなもそれを指摘しているかどうか気になってネットを検索してみて驚いた。影響どころか、盗作だと断定する人までいる。

まず冒頭。ほんとにもう、冒頭からパクりなのである。【猫哲学50】2004/09/24

あの漱石、そう、日本が誇る文豪、夏目漱石が盗作?となると心穏やかでない。

『牡猫ムルの人生観 』は、これほどの名作にもかかわらずなぜか絶版になっていて、現在新刊として購入はできない。そう、どんな本でも必ず見つかるわれらがジュンク堂は古書を取り扱っていないので、買えない。

  1. 牡猫ムルの人生観 新訳 上巻の店舗お取扱い状況(honto.jp ジュンク堂書店)

どう考えても絶版のままにしておいてよい作品ではないのに全然復刻されないのは不自然である。

  1. 牡猫ムルの人生観(上)(下)牡猫ムルの人生観(上)(下)復刊活動にご賛同の方はリクエスト投票をお願いします。(復刊ドットコム

そのため、巷では「陰謀説」を唱える声がある。『牡猫ムルの人生観 』を日本で復刻させるのはタブーなのか?たとえ偽物であってもひとたび権威が確立してしまうと、真実を知ったあとでもその権威を皆が全力で守ろうとする力学が働くのかもしれない。

「吾輩は猫である」は1905年に、文学誌「ホトトギス」に連載されたものである。

  1. 夏目漱石『吾輩は猫である』(青空文庫

帰国後は東京帝国大学講師として英文学を講じ、講義録には『文学論』がある。講師の傍ら『吾輩は猫である』を雑誌『ホトトギス』に発表。(ウィキペディア)

夏目漱石が『吾輩は猫である』を世に出したときの所属はなんと東京大学だった。東大の教員が(もし盗作だとすれば)盗作した作品を出していたということになる。1000円札の顔としてみなが財布に入れている文豪夏目漱石に盗作した人間という不名誉なレッテルを貼る勇気はなかなか持ちにくい。

 

夏目漱石の『吾輩は猫である』はホフマンの『牡猫ムルの人生観』のパクリなのか

フランスのジャズピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの初期の作品を聴くと、「饒舌なビル・エバンスか?」と思うし、初めてウディ・ガスリーを聴いたときは、「ボブ・ディランそのものじゃないか!」とびっくりしました。

What Are We Waitin’ On? 2015/08/29 ウディ・ガスリー – トピック

Jim Hall and Petrucciani live “Beautiful Love” 2007/08/13 fostexD160

芸術の世界では心酔し尊敬する偉大な先達に大きな影響を受けるのは当然です。彼らはもちろんそうした影響を与えてくれた音楽家に対する尊敬の念を隠しません。

夏目漱石の『吾輩は猫である』がホフマンの『牡猫ムルの人生観』を思い起こさせる雰囲気やスタイルを持っているだけなら、自然なことだと言えます。『吾輩は猫である』が夏目漱石の処女作であることを考えるとなおさらです。しかし、プロットのディテールに至るまで拝借していたら、オリジナリティはどこに?という疑問が頭をもたげてきます。

あの文豪氏が英国留学中には、この作品の英訳本がロンドンで売られていた事実を指摘させていただくだけに止めておいて。(【猫哲学20】■パクリ元 nekotetu.com

読んでみて驚いた。細部まで盗作なのである。(【猫哲学50】■我が輩は盗作である。 2004/09/24 http://nekotetu.com/)

今日だったらまちがいなく盗作の疑惑が寄せられたことだろう。じっさい『吾輩は猫である』の連載中に、あるドイツ文学者が元祖のホフマンの「ムル」を紹介し て漱石を茶化したことがある。すると漱石は、作中でそのことをわざわざ話題にして、まるで知らなかったことのようにとぼけたあと、猫の死亡通知を出して、そそくさと猫を死なせ連載を終えてしまったのである。 P.23 (あらゆる小説は模倣である(清水良典著)sayadaiharu.blog.fc2.com

夏目漱石は、「盗作の疑い」を友人から茶化されて、そそくさと連載を止めてしまったというあたり、やましいことをしていたという自覚があったのでしょうか?夏目漱石の『吾輩は猫である』は盗作なのか?『吾輩は猫である』は読み継ぐ価値のある文学なのか?私は個人的には、単に影響を受けただけというレベルにとどまっているとは思えず、盗作とみなされても仕方がない部分が多数あるのだろうというあたりで落ち着いています。これら2つの詳説の一つだけを選んで読むとしたら、真似をされたほうの、ホフマンの『牡猫ムルの人生観』であって、模倣である夏目漱石の『吾輩は猫である』を選ぶことはあり得ないでしょう。

 

参考

  1. 「ドラえもん」最終回事件(忘れ得ぬことども)
  2. 夏目漱石『吾輩は猫である』の冒頭の有名な出だしはフランス官能小説の影響? (2015-03-31 15:06:21 山科薫マニアックな世界を楽しみましょう
  3. Is Bob Dylan Worth The Hype? (By Richard Stockton, May 24, 2016)
  4. Bob Dylan is ‘a plagiarist’, claims Joni Mitchell (Sean Michaels, Fri 23 Apr 2010 09.56 BST The Guardian)
  5. Does Joni Mitchell hate Bob Dylan? (redd.it) She has another video interview where she denies saying any of those things and blames the person that wrote the article.
  6. Does it matter if Bob Dylan copies other people’s words and melodies? (July 21, 2017 by TonyAttwood, Untold Dylan)
  7. What was the name of the country/folk singer that Bob Dylan plagiarized from who lived in the same era? (Quora.com) None.
  8. Bob Dylan’s Not Really a Plagiarist (He’s a Conceptual Artist) (David Galenson, Huffington Post July 15, 2011)