大学の物理数学の教科書 定番、お勧め と物理数学講義ノートウェブリソース

「自然は数学の言葉で書かれている」とはガリレオ・ガリレイの言葉だそうですが、自然を記述する物理学の理解には、数学が必要不可欠です。特に物理のための数学として世に出ている教科書やウェブ上のリソースをまとめてみました。

小野寺 嘉孝『物理のための応用数学

小野寺 嘉孝『物理のための応用数学』1988/3/10 裳華房

もくじ 1.微分と偏微分 1.1 微分 1.2 偏微分 1.3 全微分 1.4 ラグランジュの未定乗数 1.5 ヤコビアン 1.6 同次関数の偏微分 1.7 ライプニッツの微分公式と2項係数 2.変分法 2.1 変分問題とは 2.2 オイラー方程式 2.3 いくつかの例 2.4 関数が複数個の場合 2.5 多変数の場合 2.6 積分形の付加条件がついた場合 2.7 直接法 2.8 微分方程式の固有値問題と変分問題 3.デルタ関数 3.1 デルタ関数の定義 3.2 デルタ関数の性質 3.3 デルタ関数のいろいろな表現 4.直交関数系 4.1 フーリエ級数 4.2 直交関数系 4.3 シュミットの直交化 4.4 直交関数系による関数の展開 4.5 ワイヤシュトラスの近似定理 5.直交多項式 5.1 エルミート多項式 5.2 ルジャンドル多項式 5.3 ラゲール多項式 5.4 ラゲール陪多項式 5.5 ルジャンドル陪関数 5.6 チェビシェフ多項式 5.7 直交多項式のまとめ 5.8 球面調和関数 6.合流型超幾何関数 6.1 合流型超幾何関数 6.2 合流型超幾何微分方程式とその基本解 6.3 合流型超幾何関数を使って解ける微分方程式 6.4 合流型 P 関数 6.5 合流型 P 関数の性質 6.6 例題,再び水素原子の問題 6.7 合流型超幾何関数の諸性質 7.ガンマ関数 7.1 ガンマ関数 7.2 ベータ関数 7.3 相反公式 7.4 倍数公式 7.5 漸近展開.スターリングの式,鞍点法 7.6 無限乗積表示とガンマ関数の計算法 7.7 ポリガンマ関数 7.8 不完全ガンマ関数 8.ベッセル関数 8.1 整数次のベッセル関数 8.2 一般の次数のベッセル関数 8.3 円柱関数.ベッセル微分方程式の基本解 8.4 漸近展開 8.5 応用.ヘルムホルツ方程式(円柱座標) 8.6 応用.円形開口による光の回折 8.7 ベッセル関数を使って解ける微分方程式 8.8 変形ベッセル関数 8.9 球ベッセル関数 8.10 応用.ヘルムホルツ方程式(球座標) 9.境界値問題とグリーン関数 9.1 微分方程式の主要解 9.2 境界値問題 9.3 グリーン関数 9.4 グリーン関数の物理的意味 9.5 グリーン関数を求めるには 9.6 シュツルム-リウビルの境界値問題 9.7 グリーン関数の対称性 9.8 境界条件を拡張する 9.9 ヘルムホルツ方程式の主要解 9.10 グリーン関数の対称性(3次元) 9.11 ヘルムホルツ方程式の境界値問題 付録:関数論入門 A.l なぜ関数論を学ぶのか A.2 関数論の出発点 A.3 解析接続とは

トピックをかなり絞り込んで、初心者向けに解説しており、これは親切でいい本だと思いました。BoasやArfkenの本は辞書的に書かれているため通読したいとは思えませんが、この本は通読する気がおきます。物理の本を読み始めたのはいいが、さっそく数学の部分で躓いてしまう学生に対する配慮が行き届いた(学生の気持ちに寄り添った)本だと感じます。

  1. 小野寺 嘉孝(リサーチマップ)

Boas ボアス

大学1年生が、初めて物理数学を学ぶのであれば、読者が初学者であることを十分意識して書かれた教科書を読むのがいいと思います。そういう点で、アルフケンよりもボアスがお勧めです。アルフケンは実に簡潔に説明されていて素晴らしいのですが、ボアスは言葉でたくさん説明してくれます。講義を聴いているかのよう。

Mary L. Boas著 Mathematical Methods in The Physical Sciences Third Edition

アマゾンのレビュー(239人の平均が4.4点という高評価)によれば、アメリカの大学で学部学生向けの物理数学の教科書として広く使われているそうです。グーグル検索するとネット上にPDFが存在します。Boasのこの教科書は非常にわかりやすく書かれています。丁寧な説明には、感動を覚えるくらい。

Arfken アルフケン

これは膨大な知識がコンパクトにまとまっていて(第7版 1220ページ)、しかし、辞書というわけではなく、きちんと説明もされているので、いい本だと思います。アメリカのアマゾンレビューもトンデモなく高評価(698人の平均が4.6点)なのも理解できます。

George B.Arfken著 Mathematical Methods for Physicists, Seventh Edition: A Comprehensive Guide

本書の問題の解答PDF(524ページ)がネットにありました。

  1. Instructor’s Manual MATHEMATICAL METHODS FOR PHYSICISTS A Comprehensive Guide SEVENTH EDITION (textbooks.elsevier.com)

 

 

これもアマゾンレビューによればアメリカでは定番の学部学生および大学院生レベルの物理数学の教科書だそうです。古い版は邦訳も出ています。
アルフケン、ウェーバー著 基礎物理数学第4版Vol.1 ベクトル・テンソルと行列 (1999年 権平 健一郎、神原 武志、小山 直人 訳 講談社)
アルフケン、ウェーバー著 基礎物理数学 Vol.2 関数論と微分方程式 (2000年 権平 健一郎 訳 講談社)
アルフケン、ウェーバー著 基礎物理数学第4版Vol.3 特殊関数 (2001年 権平 健一郎、神原 武志、小山 直人 訳 講談社)

  • 第7版 2012年1月31日 1220 pages
  • Mathematical Methods for Physicists, 6th Edition 著者:George B. Arfken, Hans J. Weber 2005年6月5日 英語 1200 pages
  • 第4版 1995年 著者:George B. Arfken, Hans J. Weber
  • Mathematical Methods for Physicists 著者: George Arfken 1985年1月21日 832 pages

 

Kreyszig クライツィグ

物理数学というタイトルではないのですが、内容的には物理数学と一部重なります。工学部の学生のために書かれた数学の本。とにかくわかりやすい。工学への応用が念頭にあるため、動機付けにもいいと思います。初学者向けの教育的な教え方だと思いました。

Advanced Engineering Mathematics 10th Edition by Erwin Kreyszig 10th edition 2011年8月16日発行)英語1280 pages

Hassani

Sadri Hassani著 Mathematical Physics: A Modern Introduction to Its Foundations

1200ページの大著。見たことはありません。

田崎

出版予定の本の原稿が公開されています。著者のコメントを紹介。

田崎晴明 数学 — 物理を学び楽しむために— (学習院大学)”これは、主として物理学(とそれに関連する分野)を学ぶ方を対象にした、大学レベルの数学の入門的な教科書である。高校数学の知識を前提にして、大学生が学ぶべき数学をじっくりと解説する。最終的には、大学で物理を学ぶために必須の基本的な数学すべてを一冊で完全にカバーする教科書をつくることを夢見ているが、その目標が果たして達成されるのかはわからない。今は、書き上げた範囲をこうやって公開している。”

岩波書店

自分の学生時代はこれくらいしか見当たらず、これを買った記憶があります。全然面白味が感じられなくて、本棚に飾っていただけでした。

和達 三樹 著 物理のための数学 (物理入門コース 10)(1983年 岩波書店)

大学講義ノート

前野[いろもの物理学者]昌弘 自然科学のための数学I/II(2014年度)(琉球大学理学部共通の講義「自然科学のための数学I」(前期)および「自然科学のための数学II」(後期)の講義録)

倉澤治樹 物理数学(千葉大学 2014年12月24日 220ページPDF)

大谷 俊介 著 速修 物理数学の応用技法 (2012年 プレアデス出版 正誤表)

河合 佑太 物理数学補足ノート(直交曲線座標) 神戸大学 地球惑星科学科 平成22年(2010年)11月27日

佐藤 光 著 物理数学ノート―基礎物理をよりよく理解するために (2006年 サイエンス社 演習問題略解)

薩摩 順吉著 微分積分 (理工系の基礎数学 1)(2001年 岩波書店)

 

岡部 洋一 著 リーマン幾何学と相対性理論 (2014年 プレアデス出版) (原稿PDF 著者のウェブサイト上)

Harley Flanders著 Differential Forms with Applications to the Physical Sciences (1989年 Dover Publications):初版は1963年で、これは第2版。
H.フランダース著 微分形式の理論 およびその物理科学への応用 (2003年 岩堀 長慶 訳 岩波書店):物理学や工学を学ぶ方が、『微分形式と可微分多様体』を勉強しようと考えるならば最適な書物。数学の諸分野の大きな繋がりが感じられてとても面白い本(アマゾンレビューのまとめ)。

B.F.シュッツ著 物理学における幾何学的方法 (1987 家正則、観山正見、二間瀬敏史 訳 吉岡書店)

 

物理数学と銘打った物理系のが書いた本がある一方で、物理のための応用数学と銘打った、数学系?の書籍群もあります。著者のバックグラウンドは数学、物理、工学といろいろ。

吉田 耕作, 加藤 敏夫『大学演習応用数学 I』  1961/5/30 裳華房

古い本ですが、復刊しています。アマゾンのレビューによると関数解析の大家による非常に良い本だとのこと。

  1. 裳華房書籍紹介サイト

赤井 逸, 山本 恭二, 栗山 憲, 弥永 学, 小島 政利, 柳瀬 真一郎『理工学のための応用数学演習』  1990/3/1 朝倉書店

 

アーノルド

V.I.アーノルド著 古典力学の数学的方法 (2003年 安藤韶一、蟹江幸博、丹羽敏雄 訳 岩波書店):商品紹介:振動論、剛体の運動、ハミルトン形式など古典力学にあらわれるあらゆる数学的手法を体系的に解説した名著。これによって力学の数理 的構造が見事に理解される。付録ではリーマン幾何、流体など応用を扱う。アマゾンレビューまとめ:数学者の手で数学的に簡潔・緻密に整理された主解析力学 の決定的名著。丁寧・厳密な説明。多様体上でのHamilton力学の厳密な取り扱い。原書タイトル:Mathematical Methods of Classical Mechanics

V.I.Arnol’d著 Mathematical Methods of Classical Mechanics (Graduate Texts in Mathematics) (2010年 K.Vogtmann、A.Weinstein訳 Springer)