高校の数学で微分を習ったときには、dy/dxは極限をとったもので一つの記号だから、分数ではありませんと授業で習ったような気がする。ところが、変数分離形の問題を解いたり、物理の時間に問題を解いたりするときは当たりまえのようにdxとdyに分けたりして計算して答えを求めることがあり、なんだか落ち着かない気分を引きずっていた。大学で解析学の講義があって、微分を定義からやり直したが、すぐについていけなくなったので何を勉強したのか覚えていない。
このもやもやを解消するには、結局キチンと書かれた解析学の教科書に戻るしかないと思って、開いてみた。大学の解析学の教科書の微分法の章を見たら、何ページもしないうちに解説があった。小平邦彦著「解析入門I」(1982年版)では、
xの関数y=f(x)の微分(differential) dy=df(x)を
dy=df(x)=f'(x)Δx
と定義する。(小平邦彦著「解析入門I」109ページ)
と説明され、その後、dy/dx=f'(x)Δx / Δx = f'(x) が導かれる。ひとまとまりの記号として導入されたdy/dxと、分数の形としてのdy/dxが同一(=f’(x))だという結論に至ったのだから凄いことだと思ったのだが、このことに関しては、特に言葉による説明はない。あっさりしたものだ。ところが、高木貞治著『解析概論』には、得られた結果に関して、もっと詳しく説明がなされていた。
記号dy/dxにおいてdxおよびdyが各々独立の意味を有するから、dy/dxは商としての意味を有する。すなわち’微分商’というものである。このように、現代的の精密論法によって、Leibnizの漠然たる’微分商’が合理化される。(高木貞治著 改訂第三版 軽装版『解析概論』37ページ)
商というのはもちろ割り算のこと、すなわち分数のことなので、dy/dxは分数と考えてよいと明言しているわけだ。
解析概論はいまどきもう古くて、新しい教科書のほうだけ読んでいればいいのかと思いきや、そんなことは全然なかった。解析概論にはきっちりと、何かを定義する際のモチベーションにも言及があったり、けっこう懇切丁寧な説明がなされていて、とても親切な教科書である。どんどん新しい解析学の教科書が出版されているのかもしれないが、新しい本のほうが説明が詳しくてわかりやすいというものでもない。自分の手元にあるのは改訂第3版 軽装版だが、2010年に版を組み直して読みやすくしたものが刊行されている。
f(x) は微分可能とする.
x の変化量をΔx とすると,y の変化量Δy は
Δy = f(x + Δx) – f(x)
= f'(x)Δx + o(Δx) →誤差
Δx → 0 のとき0 に収束o(Δx) を無視してΔx をdx を表わしてえられる
dy = f'(x)dx を微分dy とよぶ.
(http://www1.doshisha.ac.jp/~kmizoha/analysis1/Lecture4.pdf)
更新:2017年04月26日