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巨大昆虫がかつて存在した理由~拡散に頼る昆虫の呼吸システム

生き物は呼吸によりエネルギーを得ています。呼吸というのは、酸素を用いて炭水化物を酸化し、二酸化炭素と水にするときに化学エネルギーを取り出す営みです。この反応は、細胞の中で行われます。

私たちの体は細胞から構成されており、個々の細胞は呼吸をするための酸素が必要です。つまり肺に吸い込んだ酸素を全身の細胞にくまなく配給する仕組みが必要になります。酸素は血球の細胞質に存在するヘモグロビンと結合し、血流に乗って全身の隅々まで運ばれ、細胞に到達しています。

ところが、昆虫の場合は、ヘモグロビンのような酸素の運搬役が存在しません。昆虫では血流によって酸素を末梢に運ぶのではなく、気管(trachea)が全身に張り巡らされており、それによって酸素が隅々まで運ばれます。酸素の移動は、拡散によります。気管は外界とつながった空間で、外界に接する部分の構造が、気門(spiracle)、そこから伸びる管が気管(trachea)で、気管が枝分かれして細かくなったものが毛細気管(tracheoles)で、体の隅々にまで広がっているのです。

バッタの気門(spiracle)、気管(trachea)、毛細気管(tracheoles)の構造を説明した動画。
Gas Exchange in Insects

ゴキブリの気管システムを説明した動画。
Cockroach dissection – Respiratory system

昆虫は、酸素の取り込みを単純に拡散に依存しています。そのため、体が大きくなりすぎると体の隅々まで拡散していかないため、十分な酸素濃度が得られなくなり、生存できないのです。それが、体の大きな昆虫が存在できない理由です。下のウェブサイトの図がわかりやすいです。古生代(Paleozoic era)の大気は、酸素濃度が今よりもずっと高かったために巨大な昆虫が生きていたと考えられています。そして、酸素濃度の減少とともに絶滅してしまったのです。

The distance oxygen can travel down the tracheae depends on its concentration in the air. If atmospheric oxygen is doubled, theory says that it should be able to make it twice as far. According to Graham and Dudley, escalating Paleozoic oxygen levels may have helped speed oxygen transport in the longer tracheae of bigger insects. The environment itself could have opened the respiratory door for Paleozoic insects, allowing giant species to evolve. (https://askabiologist.asu.edu/how-insects-breathe)

Interestingly, the rise and fall of atmospheric oxygen also coincided with the evolution and extinction of giant insects. Harrison and other biologists propose that this was more than just coincidence. They hypothesize that high oxygen levels could explain the existence of giant species. (https://askabiologist.asu.edu/explore/prehistoric-insects)

大気中の酸素濃度が現在よりもずっと高かった古世代に巨大昆虫が跋扈していた様子(想像図)。
Meganeura – Giant Dragonfly