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【量子力学】単一電子が二重スリットを通った場合に干渉縞が形成される実験

多くの量子力学の教科書では、古典力学の限界を紹介する際に、電子の奇妙なふるまいが最初に紹介されています。二重スリットに向かって電子を発射し、二重スリットの向こう側に電子を検出する装置を置いておいたばあいに、多数の電子を発射して結果をみたらどうなるかというものです。電子がパチンコ玉と同じ性質で単純に大きさだけが極端に小さいのであれば、パチンコ玉で実験したのと同じ結果がえられるはずです。すなわち、二重スリットのどちらかを通って向こう側に到達します。スリットの縁に当たった場合には散乱されるので、すこし周りにも着地することになるでしょう。いずれにせよ、スリットの二重の隙間を反映して、着地する可能性が高い部分が二本線となって現れるはずです。同じことが電子を使った実験でも起きるかというと、これが全然違う結果になるわけです。なぜか、着地する頻度が高いところと低いところが交互にあらわれて、縞々模様が出現します。

この縞模様が現れるのは、まさに波の干渉という性質によって現れるものと同じなので、電子は粒子のようにふるまいつつも、波の性質も併せ持つ不思議な存在というわけです。こうした教科書の説明であまりはっきり書かれていないのは、この干渉縞は、電子が同時に発射される実験ではなく、ポツポツと一回につき一個の電子が使われる条件でも生じるということです。複数の電子が二重スリットを通り抜けて互いに干渉しあうというのならまだありそうにも思えますが、一個の電子の場合、スリットのどちらかを通るしかないはずです。それにも関わらず、あたかも両方を通ったかのような干渉縞が生じるから大変な驚きなわけです。

教科書にさらっと紹介されている事例なので、理論に基づいてあとから作った思考実験なのかなという気もして、今一つそのすごさを実感していなかったのですが、実際にそのような実験が行われていたことを知りました。YOUTUBEにそのデモンストレーションの動画がありました。

Single electron double slit wave experiment 2008/04/06  deussy3

これほどわかりやすい、教育的な動画はなかなかないのではないでしょうか。細かい実験条件はわかりませんが、単一電子を繰り返し発射して、二重スリットの向こうで検出された点の空間分布を示したものです。