正電荷を持っていて反発するはずの陽子同士がなぜ結合して一塊の原子核を構成できるの?

素粒子という言葉はよく聞きますが、自分の頭の中では陽子と中性子と電子が全てで、それより細かい粒子のことは勉強したこともなくて全くわかりません。原子核は陽子と中性子が一塊になって存在しているということは高校の物理でやりましたが、考えてみると正の電荷を帯びている陽子同士がなぜ近い距離に存在して結合できているのか不思議です。その不思議さに今頃疑問を持つ自分って、これまで何を考えて生きてきたの?というくらいに呆れてしまうくらいです。

水素を除くあらゆる元素の原子核は、複数の陽子と中性子が「パイ中間子」の媒介する強い力で結びついている。同じ正の電荷を持つ陽子同士の間には電磁気力による反発力が生じるが、陽子の間を飛ぶパイ中間子が伝達する強い力はその電磁気力をはるかに上回るhttps://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12069_qcd

上のウェブサイトに、端的な説明がありました。未知の自然現象を説明するのに、新しい要素の存在を仮定していいのか?という科学における根源的な問題がありますが、パイ中間子なるもののおかげだそうです。しかし、「中間子が力を伝達する」という意味がよくわかりません。原子と原子がなぜ結合して分子になっているのかという説明では、共有電子対を原子と原子の間で共有されるからという説明がありましたが、電子が力を伝達するからという説明ではなかったと思います。

水素分子イオンは、電子を交換することで 引力が生じ、分子を形成していると 考えることもできる。 パイ中間子を交換することで 生じる核力と基本的に同じしくみ。 電子を交換できなくなるほど離れると 引力が働かなくなること(短距離力)も同じ このしくみを理解するには量子力学が必要 時間 参考書:ファインマン物理学V「量子力学」10章 http://www3.u-toyama.ac.jp/physics/yoshida/gendai/2.pdf

上の説明だと共有することと引力が生じることとは同じだそうです。

原子核は、いくつかの核子(陽子と中性子)が「核力」によって結合することで作られています。核力は核子間に働く力のことで、陽子や中性子が接近したときに働きます。電磁気力にくらべてはるかに強い力のため、陽子同士に働く電気的な斥力に逆らって原子核を結合させることができます。核力は、1935年の湯川秀樹による「中間子論」に基づいて理解されてきました。これは、2つの核子の間で中間子が交換されることによって核力が生じるというものです。https://www.jicfus.jp/jp/2017-01/

パイ中間子を理論的に提唱したのが湯川秀樹で、その後実在が確認されたことで1949年にノーベル物理学賞を受賞している。https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12069_qcd

実際の理論は自分の理解力を超えていますが、湯川秀樹が根源的な問題に答えを与えたということはわかります。素人的に考えても、そりゃノーベル賞もらって当然だと思いました。

しかし中間子を交換することと、それが引き合う力になることとがなぜ同じなのかがいまいちしっくりきません。

 

グルーオン

これらの「力」は、実は素粒子が伝えています。電磁気力は「光子(光)」、強い力は「グルーオン」、弱い力は「Wボソン」と「Zボソン」です。(重力は「重力子」が伝えていると考えられていますが、まだ見つかっていません)。https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/hk/special/yonde04/

パイ中間子で引力を説明できたのかと思ったら、グルーオンという説明もでてきてさらに混乱しました。そういえば、現代物理学基礎特論 (岡本良治)(PDF) の中で、「核力の二つの見方」として、「核子(p,n)・中間子(π)による見方」と「クォーク(q)・グルオン(g)による見方」とが紹介されていました。どうやら同じ現象に対して異なる理解の仕方が存在するようです。

グルーオンとパイ中間子との関係

強い力を媒介する力の粒子グルーオン核子を結びつける力(核力)の粒子は湯川博士の予言した π 中間子だが、π 中間子はクォークと反クォークの対からなり、それらを結びつけているのがグルーオンだ。突き詰めれば中間子交換による核力もグルーオンによる力だと言える

(ILCの物理 https://www-jlc.kek.jp/ilcphys/hep_intro/force/force5)

上の、この説明でようやく全体像がつかめました。最初からそう説明してくれればいいのに。上のこのウェブサイトは、他のページをみても説明が非常にわかりやすいです。

強い力は、4つの基本相互作用のうちの一つである。強い力が働いている例は2種類ある。1つは、クォークを結びつけて陽子や中性子等の核子を作る力である。この力を媒介するのがグルーオンである。もう一つは、陽子や中性子などのハドロン間を結びつける力である。この力を媒介するのがπ中間子である。π中間子はクォークと反クォークの対で、グルーオンにより結びついている。湯川秀樹の提唱したπ中間子は、クォークの導入により発見当時から様変わりした形となっている。

強い力 2021年 07月 13日 エネルギー体理論 (素粒子から宇宙の構造までを司る公理の発見とその検証) )

上の説明もわかりやすいと思いました。最近の素粒子論(素人向けの一般書)を読むとパイ中間子がほとんど出てこなくて、湯川博士の業績はどこに行ってしまったんだろうと思っていたのですが、上の説明ではその点にも言及されています。ただこのブログでいう「エネルギー体理論」というのは初耳で物理学の分野で聞いたことがない言葉・概念です。

  1. Energy Body Theory that explains the origin of everything in the universe. Ichiro Nakayama Yazucho Yazugun Tottoriken Japan https://vixra.org/pdf/2310.0033v1.pdf 

上述のサイトは、オーソドックスな物理学の解説サイトというよりは個人的な主観(仮説)を述べたもののようでした。energy bodyという語句は、他の文脈でも使われていますが、それとも違うみたいです。

  1. https://cswr.hds.harvard.edu/news/2023/05/03/video-reiki-energy-medicine-and-post-materialism “energy body”
  2. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1297510/ “energy body”
  3. https://life-longlearner.com/lessons-learned-on-the-energy-body-and-tuning-into-the-broader-field-of-consciousness/
  4. https://www.researchgate.net/publication/26801884_The_Energy_Body_and_Its_Functions

 

 

核子同士の反発

核子 nucleon(陽子と中性子)同士は「強い力」で結合していますが、核子同士が近づきすぎると今度は反発力が生じるのだそうです。

  1. 現代物理学基礎特論 (岡本良治) 講義1:核力と原子核構造の不思議 講義2:魔法数の生成、消滅 講義3:宇宙におけるファインチューニング  (PDF) 2007.8.21 @九工大・工学研究科
  2. クォーク間の「芯」をとらえた ─ 物質が安定して存在できる理由の理解に貢献 ─ 2022年9月5日 国立大学法人 東北大学大学院理学研究科 国立大学法人 京都大学大学院理学研究科 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 原子核を構成する源の力である核力は、陽子と中性子が比較的離れたときには引力ですが、陽子と中性子が重なり合うような近い距離では大きな反発力(斥力(注2))へと変化します。この神秘的とも言える引力と斥力のバランスのおかげで原子核は自身の引力で潰れることなく安定に存在することができます。しかし、この斥力を生み出すメカニズムの理解は長年の課題でした。このような短距離では、陽子・中性子の中に閉じ込められた物質の最小単位であるクォークのペアがパウリの排他原理(注3)があるため、同じ量子状態をとるクォーク間に強い斥力が生じると予想され、核力の短距離での強い斥力の一因と考えられています。しかし、このクォークのパウリ原理による斥力の強さは現在まで全く不明でした。

 

関連文献など

  1. ILCの物理 https://www-jlc.kek.jp/ilcphys/hep_intro/force/force5
  2. 対称性の自発的破れ【電子版】基礎からランダウ理論,南部理論,標準模型,ヒッグス粒子まで 菅本晶夫(お茶の水女子大学名誉教授) 著 曹 基哲(お茶の水女子大学教授) 著 発行日:2023年3月10日発行:サイエンス社ISBN:978-4-7819-9000-2サイズ:電子書籍ページ数:205ページ
  3. https://rpg.jaea.go.jp/else/rpd/others/study/text_data/text_each/chap3_20191224.pdf
  4. https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20190124-10040.html
  5. https://wwwnucl.ph.tsukuba.ac.jp/~nakatsukasa/RIBF_report.pdf
  6. 原子核を核力から作る —パイ中間子のすごさと難しさ― 土岐 博 https://viva-ars.com/wp-content/uploads/2013/03/e58e9fe5ad90e6a0b8e38292e6a0b8e58a9be3818be38289e4bd9ce3828befbc91.pdf
  7. 玉垣さんを偲ぶ研究会 「原子核・クォークと中性子星 ― これまでとこれから ―」 2015.6.11-13 京都大学基礎物理学研究所パナソニックホール 研究会報告 https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~soken.editorial/sokendenshi/vol22/1/takatuka2016Jan.pdf
  8. 物理学700のの不思議不思議 https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/files/71-09_70fushigi.pdf
  9. https://www.tsukuba.ac.jp/about/pressrelease-lists/070620press-1.pdf 
  10. 強い相互作用とハドロン物理 https://hyodo.fpark.tmu.ac.jp/class/2019/Gendai/19_16Gendai.pdf
  11. https://www2.kobe-u.ac.jp/~lim/kougi-note11-pdf/soryuushi-note4.pdf
  12. https://lambda.phys.tohoku.ac.jp/~kimiko/LectureNote/Hokkaido2014/pdf/Hokkaido_2014-02-20-1KimikoSekiguchi.pdf

質量の起源

陽子や中性子も3つのクォークが集まってできているが、その質量はクォーク3つの合計よりもはるかに大きい。南部陽一郎は1960年代にこうした現象を「カイラル対称性の自発的破れ」で説明し、その功績で2008年にノーベル物理学賞を受賞している。https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12069_qcd

このウェブサイトの解説のおかげで、中身は理解できませんが南部陽一郎のすごさだけは納得できました。

  1. https://www2.kek.jp/imss/news/2020/topics/0331Spin6/
  2. http://www3.u-toyama.ac.jp/physics/yoshida/gendai/2.pdf