情報開示請求の判例 平成15(行ウ)597 公文書非開示決定取消請求事件

情報開示請求の判例をメモしておきます。争点となる法律の条文が何か、その条文で争われた判断を探すことが大事だと思います。今の場合だと、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(e-gov)の第五条にある「不開示情報」に該当するかどうかがポイントになります。つまり、「~のおそれ」に該当するのかどうかです。また、第五条の不開示情報に該当するとしても開示する不利益を上回る「公益」があるかどうかが重要になると思うので、第七条の「公益」に該当するのかどうかもポイントになると考えられます。

行政事件裁判例集

平成15(行ウ)597 公文書非開示決定取消請求事件

平成15(行ウ)597 公文書非開示決定取消請求事件(裁判所データベース)

平成16年12月24日 東京地方裁判所 全文

判決文は長くて項目が細かくわかれていて、判決文の一般的な構造を知らない自分には非常に読みにくい文章です。項目を一部抜き出してみると、

第一 請求(PDF1ページ目)
第二 事案の概要(PDF1ページ目)
第三 当裁判所の判断(PDF14ページ目)

一 「動物実験計画書」中の不開示部分について

1 「動物実験計画書」について

2 「申請者氏名」及び「連絡先」(ただし、講師以上の者を除く。)について

(一) 情報公開法5条1号該当性について

(1) 情報公開法5条1号本文該当性について

(2) 情報公開法5条1号ただし書イ又はハ該当性について

イ まず、原告は「動物実験計画書」中の「申請者氏名」欄及び「連絡先」欄に記載
された情報が情報公開法5条1号ただし書イに該当する旨主張するので検討する。

(PDF16ページ目)(エ) さらに、原告は、被告によって行われてきた動物実験の適法性を判断する上 で、「動物実験計画書」中の「申請者氏名」欄及び「連絡先」欄に記載された情報の開示は 必要不可欠であるから、これらの情報は開示されるべきである旨主張する。 しかしながら、行政文書が開示されるべきか否かは、当該行政文書に含まれる 情報が情報公開法5条に規定されている不開示情報に該当するか否かによって判断される べきであって、情報公開法7条が規定する公益上の理由による行政機関の長による裁量的 開示の場合を除いて、開示の必要性が高いという理由によって、不開示情報が開示されるべきであるということはできないことは明らかである。そして、本件において、原告は情報公開法7条に基づく裁量的開示に関して何ら主張立証していない。そうすると、原告の上記主張に理由がないことは明らかである。

(二) 情報公開法5条6号柱書・同号ハ該当性について

3 「実験題目」及び「実験内容」中、研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部分について

(一) 情報公開法5条6号柱書・同号ハ該当性について

二 「ニホンザル戸籍簿」中の不開示部分について

1 「ニホンザル戸籍簿」について

2 「識別用各個別写真」について

(一) 情報公開法5条6号柱書・同号ハ該当性について

(PDF21ページめ)(5) 原告は、「ニホンザル戸籍簿」は、鳥獣保護法、動物愛護法等の法律に抵触していなかったかどうかなど、一連の事実関係を知る上で、極めて重要な資料であり、被告が不適法な動物の管理と極めてずさんな動物実験を長年続けていたことからすれば、「ニホンザル戸籍簿」を開示する必要性は極めて高い旨主張する。しかし、行政文書が開示されるべきか否かは、当該行政文書に含まれる情報が情報公開法5条に規定されている不開示情報に該当するか否かによって判断されるべきであって、情報公開法7条が規定する公益上の理由による行政機関の長による裁量的開示の場合を除いて、開示の必要性が高いという理由によって、不開示情報が開示されるべきであるということはできず、本件において、原告は情報公開法7条に基づく裁量的開示に関して何ら主張立証していないことは、前記一2(一)(2)イ(エ)で判示したところと同様である。したがって、原告の主張には理由がない。

興味深いと思った部分を抜き出して、太字下線等の強調を施してみました。法律の条文がどのように実際に適用されるものなのか、裁判官の考え方が述べられていて大変参考になります。特に面白いと思ったのは、原告は開示の必要性が高いと主張したが、必要性が高いかどうかで開示・不開示の法的判断がくだされるわけではなく、あくまで条文に則って判断されると説明の部分です。不開示とすべき情報(不開示情報)は5条に規定されているので、これに該当するかどうかが争点になっています。また、不開示情報であっても公益性が高い場合には裁量的に開示できるということが7条に書かれていますが、原告はこの7条を争点に持ってこなかったため、7条が適用されるかどうかの判断すらされずに原告側の主張が裁判官によって退けられています。私はこれを読んだときに、7条を争点にもってきていれば違った判断が下ったのかもしれないという感想を持ちました。