立花隆『田中角栄研究全記録 上』講談社文庫 1976年

立花隆『田中角栄研究全記録』は、文藝春秋に掲載された論文をまとめて本にしたもの。ジャーナリズムの教科書を読むと必ずといっていいほど、ジャーナリズムの一つの成功事例として紹介されている本です。

違法か合法かの境目

企業の側が恩恵を与えてくださいということで献金をさし出し、政治家がそれを受けとれば汚職である。逆に、政治家が、献金をよこさないときびしく当たるぞとおどかし、企業がそれに応じて出せば恐喝になる。 しかし、いまの法律では、企業の献金と、政治家の恩恵を与えたり、手心を加えたりの行為がそれぞれ独立になされたのだという体裁がとられてさえいれば、汚職、恐喝の犯罪を構成しないことになっている。(23~24ページ)

お金と政治の関係

汚職まがいの政治献金は、”献金によって政治を動かす”という性格を持ち、恐喝まがいのほうは、”政治によって献金を引き出す”という性格を持つ。(31ページ)

ジャーナリストの視点・仮説を立てるときの考え方

オモテの動きだけで、合理的な説明が不可能なものには、それを補完する動きがウラになければならない。(88ページ)

ペンは剣より強しなのか

”ペンは剣より強し”などということは、一般には通用しない。権力の強さは、それを身近にふれたことがある人ならば誰でも知っていることだが、圧倒的なものがある。(95ページ)

金権政治の本質

いったん金権政治をはじめてしまうと、部下を前と同程度につなぎ止めておくためだけにも、とめどなくバラまく金の量を多くしていかねばならない。自前の金でそれをやっていると、いずれ為政者は政治を利用して金を儲けるという悪政をはじめることになる、とマキャベリはいう。(177ページ)

参考

  1.  君 国売り給うことなかれ–金権の虚妄を排す (危機に立つ自民党) 石原 慎太郎 文芸春秋 52(10), 92-106, 1974-09 http://ci.nii.ac.jp/naid/40003416828