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有機化学反応で電子の動きを示す巻き矢印の表記方法

有機化学の反応式の説明でよく、電子のうごきを矢印で順々に示したものをよく見かけます。なんとなくそんなものかと思って眺めていたのですが、実はそれが何を意味するのかをちゃんと理解していませんでした。『基礎講座有機化学』を読んでいたら丁寧な説明があって、そういうことだったのか!とやっと意味が分かりました。

巻き矢印(曲がった矢印)は、「電子対」の移動を表す。電子1個ではなく、電子2個の対を一つの矢印で表していたのでした。

片羽の巻き矢印(矢頭のいっぽうだけが釣り針のようになったもの)は、電子[1個」を表すという約束事だそうです。

矢印をどこからどこに引くのか?も大事なポイントです。

矢印の始点:移動する電子がもともとあった場所。

矢印の終点:移動した電子の行先(の原子)

2つの分子が結合する場合には、巻き矢印の弧の内側で、始点の脇にある原子と、矢印の先の原子とが結合することになります。(基礎講座有機化学56ページ 下から3行目参照)

言葉の定義をいくつか。

ラジカル:不対電子を持つ化学種。例えばA:B のようにAとBとが電子対を間に共有して結合していたとします。この電子対(2個の電子)の一つ一つがそれぞれAとBとに移動して、AとBとが別れた場合、A.    .B のようにAとBとは不対電子をもつことになり、ラジカルと呼ばれます。

ラジカル反応:ラジカルが関与する反応をラジカル反応と呼ぶ。

アニオン(陰イオン)、カチオン(陽イオン):A:Bで電子対がどちらか一方に渡された場合には、 A+  :B-  のように、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)とになります。

求核剤(求核種):電子対を提供する化学種のこと。

求電子剤(求電子種):電子対を受け入れる化学種のこと。

いわずもながですが、A-B のようにAとBの結合を示す棒は、A,Bに共有されている「電子対」を表しています。

有機化学反応の代表的な反応:

  • 置換反応:求核置換反応(Nucleophilic Substitution)SN1、SN2
  • 付加反応
  • 脱離反応 (Elimination):E1反応、E2反応
  • 転位反応

協奏反応:結合の切断と、結合の生成が同時に進行する反応。

オクテット則:第2、第3周期の原子は最も外側の殻に8個の電子が入ると(希ガスと同じ配置)、イオンや分子が安定する。例えば、アンモニウムイオンと水酸化イオンが反応してアンモニアと水ができる反応を考える際、水酸化イオンの酸素のもつ電子対を始点に巻き矢印を引く場合、矢印の先の原子は窒素ではなく(窒素はすでにオクテット則を満たしているので)、水素原子にむかって引く。すると、その水素と窒素との間の電子対から新たに矢印を窒素原子に向かって引く(つまり、水素ー窒素間の共有電子対が、窒素の非共有電子対になるということ)。(基礎講座有機化化学55ページ参照)。

協奏反応(複数の巻矢印の連携)に関して:複数の巻矢印は、同じ方向に向かうように表記する。電子密度の高いほうから低いほうへと電子が移動していくように描く。

複数の反応を同時に表記する場合がある。それは、どちらかが起こるという意味であって、一つの分子に関して両方が起こるという意味ではない。(基礎講座有機化化学61ページ、62ページ参照)

これくらい知っていれば、とりあえず何とかなりそうです。大学のとき有機化学の授業があって、一通り学んだはずだったのですが、全部、見事に忘れてました。もしくは、勉強が身に付いていなかったのか。

基礎講座有機化学は、とにかく手を動かして、反応機構を巻き矢印で図示してみなさいと説いていました。数学や物理と同じですね、目で教科書に書かれたものを追っただけでわかった気になっても何も身に付いていません。教科書を手で隠して、いざ手を動かして確かめてみようとすると、本当に簡単なことができなくて唖然とします。