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浸透圧とは?「浸透圧が高い液」、「高張液」の意味

2020/01/04
 
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浸透圧(osmotic pressure)という概念は、高校の理科や生物で習います。大学入試では浸透圧の計算問題も出題されるので、高校生にとって当たり前にしておくべきトピックだといえます。

浸透圧は、半透膜の両側の圧力の「差」

浸透圧は自分にとってどうも理解しづらい、腑に落ちにくい概念でした。大学受験は通過して長い年月が過ぎ、学校の勉強の記憶が薄れている状態ですが、物理化学の教科書を読みなおしていて、わかりやすい説明に出くわして少々驚きを覚えました。

Christiaan Sybeesma著Biophysics: An Introduction (1989 Kluwr Academic Publishers )(1977年初版の改訂版)という本の196ページ~198ページに、ファントッフの浸透圧の公式を導出する過程が説明されていて、そこで浸透圧の定義が説明されています。

区画Iと区画IIの境界には固定された半透膜が存在し、区画Iには溶媒のみ、区画IIには溶媒と溶質が入れられているとします。半透膜を介した溶媒の出入りが平衡に達したときの、区画Iの圧力をpI区画IIの圧力をpIIとして、pII-pI=π(浸透圧)と定義すると述べられています。

恥ずかしながらこの記述を読んで、浸透圧って「差」なんだと思いました。当たり前すぎて何を今更なことなのですが、浸透圧という圧力があるのではなくて、半透膜の両側の圧力「差」だという説明をはっきりとされた記憶が自分にはないのです。忘れただけかもしれませんが。浸透圧の計算ができないと理系の大学には受からないでしょうから。

電気化学の教科書 『ベーシック電気化学 』 (2000/9/1 大堺 利行 , 加納 健司 , 桑畑 進 著  化学同人 (2000/9/1)を見たら、確かに「差」が浸透圧だという説明の図がありました(10ページ)。

生物学用語としての「浸透圧」

物理化学の教科書における「浸透圧」の意味と、生物学で出てくる「浸透圧」の意味は、もちろん同じです。ウィキペディアの説明では、

細胞内の溶液と比較して、浸透圧が高い溶液を高張液(hypertonic)、低い溶液を低張液(hypotonic)、等しい溶液を等張液(isotonic)という。

 

自然界の生物においては、淡水は細胞内より浸透圧が低く、海水は浸透圧が高いので、それぞれに浸透圧調節が必要となる。

(浸透圧 ウィキペディア)

とあります。なぜ自分の頭が混乱していたのだろうと考えると、何と何との差なのかが、ぼやけていたからでした。「溶媒のみ」の圧力を基準としたときの、溶液(溶媒+溶質)の圧力の差なわけです。どういう条件での圧力かというと、半透膜を介して溶媒の流入がなくなるように余計にかける圧力というわけ。

また、「高張液」と「~液は浸透圧が高い」という言い方もごっちゃになっていました。高張というのは細胞内液を基準に高いと言っているのです。~液が浸透圧が高いという場合には、比較対象は細胞内液のこともあるかもしれませんが、必ずしも明瞭でありません。

●●度の温度において●●mol/Lのグルコース溶液の浸透圧はいくらか?みたいな問題を公式に当てはめて答えを出すことは簡単ですが、計算しているときに浸透圧の「意味」があいまいになっていたのかもしれません。定義に戻るなら、半透膜を隔てたときに溶媒の出入りが正味ゼロになるような条件における、溶媒しかない区画との圧力の差のことを浸透圧と呼んでいたのでした。

ちなみに、ファントホッフの公式の重要な応用として、未知の溶質の分子量を計算で求めるというものがあります。浸透圧は実験的に測定できるので、分子量が計算できるわけです。理論のパワフルさが実感できます。

ミリオスモル(mOsm/L)

電気生理学実験をやる人がよく実験に使う生理食塩水か何かの浸透圧を測っているのを見たことがありますが、確か単位がmOsmだったように思います。以下のサイトに説明がありました。

mOsm/L : 溶液1L中に溶けている粒子の数 mOsm/L = mmol/L × 粒子の数 mOsm/L浸透圧を表す単位で、溶液1L中に溶けている粒子数です。浸透圧は、各イオン粒子のモル数の総和で求められます。浸透圧は、浸透圧計を用いて測定されます。その時の単位はmOsm/kgH2Oで表しますが、生理的な濃度範囲では両者の差は少なく、通常はmOsm/Lが用いられます。(引用元:https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/unit/)

粒子数から浸透圧が計算されるので(π=cRT)、粒子数=圧力と考えるということなのでしょう。

浸透圧が高い液、低い液という言い方も頭を混乱させる表現のように思えましたが、単純に、半透膜を通れない溶質の粒子数の多い、少ないを言っているに過ぎないとわかれば何も難しいことはなくなります。

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