正しいほめ方、間違ったほめ方

職場で、上司がAさんに対して、
「Aさん、仕事できるねぇ。」
とほめたのに対して、Aさんは、
「いえ、全然できないです。」
と慌てて強く否定するような言動をしていました。

これが謙遜の範囲なら良いのですが、Aさんの口調は「そんな、ハードル上げられても困ります。」と期待されることを恐怖するような口ぶりでした。

能力をほめられたときに、素直に「ええ、まあ。」と受ける人もいる一方で、「自分は全然ダメです。」と本気で答える人もまた多いのです。この差は一体何でしょうか?

これに関して、興味深い実験結果を紹介している記事がありました。

頭の良さを褒めたグループは、新しい問題を避け、同じ問題を解こうとする傾向が強くなった。ボロを出して自分の能力を疑われるかもしれないことは、いっさいやりたがらなくなった。一方、努力を褒められた生徒達は、その9割が、新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。(スタンフォードの心理学教授に学ぶ子供の教育方法

スタンフォード大学の心理学教授キャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)氏が、彼女の書籍『「やればできる!」の研究』(原著 Mindset)の中で紹介している研究結果だそうです。

能力をほめるのではなく、努力をほめようということです。良い結果をほめるのも、ダメだそうです。

そんなときは、「頭がいいのね」ではなく「よく頑張ったね」とほめる。
才能をほめると、良い結果が出たときは「自分は才能があるからだ」と考える。悪い結果が出たときは「自分は才能がないからだ」と考える。
才能や結果をほめることは、子どもに負の思い込みを植え付ける。
結果ばかりほめていると、子どもは悪い成績をとったときに、それを隠すようになる。(「学力の経済学」を読んで。子どもはほめてはいけない。ご褒美で釣るべきだ。

職場にはいろいろな人がいますが、ほめられたときのリアクションの仕方を観察すると、その人の個性が見えてきて興味深いです。

話はずれますが、子供時代は努力しただけで学校の先生がほめてくれますが、大人になって社会に出ると、どんなに努力しても結果を出さない限り評価されません。しかし、結果を出す人は必ず努力をしています。

私は大人になるまでずっとそう思っていました。

しかし、結果を出している人をよくよく見ると、実はそうでもないのです。やるべきことを当たり前のようにやっているのですが、本人は好きだからやっているだけであって、決して努力を努力と思わずにやっていたりします。「努力」という子供時代に植えつけられた概念は、成功する上でそもそも必要がない概念だったのかもしれません。

同様のことは他にもあります。

「私は、どうしても自信が持てないんです。」

自信がないので、できませんと言い訳する人もたくさんいます。しかし成功している人は、自信があるとかないとか考えるまでもなく、実行に移しているものです。物事を始める前に、いちいち自分に自信があるかないかを考えたりしないのです。「自信」なんてものは不要なのです。

ナイキのフレーズが本質を突いていますね。

Just Do It.