大学の授業が難しい理由とその対策

自分は高校の初日から授業が難しくてついてけず、授業時間が睡眠時間という高校生活を送ってしまいました。浪人して通った予備校の最初の3か月の授業は高校3年分の基礎をおさらいするものでしたが、これでようやく自分が寝て過ごした高校3年分の勉強の内容が俯瞰できたような気がしました。大学に入ると、やはり授業が難しくてついていけず、ほとんど出席せずにサボるか、わけがわからないままとりあえずノートを取っておくだけということが多くなってしまいました。

授業が難しく感じた理由って何だろうと思い返してみると、ひとつは自分のやる気のなさ、理解力の無さもあるのですが、他方で、分かりやすい授業ではなかった、生徒や学生にわからせようという熱意が先生にあまり感じられなかった、さらには、そもそも勉強そのものが難しいものだったという3通りくらいの可能性があるのかなと思います。

教科書に沿った授業であれば、授業で落ちこぼれても指定の教科書を読み込んでフォローするということが可能だと思いますが、特定の教科書に沿わずに行われている授業の場合には、一度落ちこぼれると挽回するのが困難です。自分の理解力が足りないから先回りして予習しようにも勉強する材料がありません。

自分が高校、大学でうけた授業は、ついてこれるやつだけついてくればよいという態度の授業でした。今振り返って思うに、小学校の先生、中学校の先生、予備校の先生は生徒に理解させようという熱意に溢れていたと思います。

大学の授業なんてそんなものだと諦めるしかなかったのですが、海外の大学教授が書いた教科書を買ってみたら読者に理解させようという気持ちが感じられる教科書が多くて驚きました。自分が受けていた授業の先生たちの書いた教科書とは驚くほど違っていました。今は時代が変わったのか、日本の大学の先生が書いた教科書にも、出来の悪い学生の立場にまで降りてきて、わからない学生の心情に寄り添った教科書が出版されるようになってきていると思います。例えば、

  1. 金谷 健一 これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで 2003年06月 共立出版

多くの大学の先生は、自分が教える学問領域に関して無駄をそぎ落とした論理展開の教科書を書きたいのかもしれませんが、『これなら分かる応用数学教室』は、トピックを絞り込んで、そのかわりしっかりと理解させようという趣の本です。新しい概念を学ぶというのはこういう感覚なのかということが体験できて、読んでみて非常に面白いと思いました。似たような読後感があった本としては、

  1. 由井 宏治 見える!使える!化学熱力学入門 2013/08/24 オーム社

があります。大学の熱力学の授業はチンプンカンプンなまま卒業してしまい、そうはいっても生命科学の研究の道に進むとやはり熱力学をわかっていないと生命現象を理解した気になれないし、大事な根幹がすっぽりと抜け落ちているように感じます。そんなわけで、とっつきやすい熱力学の教科書がないかと探していてたまたま本屋で見つけて手に取って、読んでみたらストーリー展開が明瞭でどんどん先へに進む感覚があり、通読するのが楽しいと思える教科書でした。

こういう教科書を読んでみて思うのは、教え方を工夫すれば理解できる学生の数はもっと増えるのではないかということです。

マセマ出版 大学数学キャンパス・ゼミのシリーズも、大学受験参考書並みのわかりやすさで大学の勉強を教えるスタイルで、非常に斬新だと思います。

  1. マセマ出版 大学数学キャンパス・ゼミ

 

大学の教科書にさらっと書いてあることでも、実際には、その当時の天才的な科学者たちが試行錯誤の末にたどり着いた真理なわけで、それをさも当たり前であるかのように数分でさらっと通り過ぎるような説明をされても、しっくり来ないのです。

 

その内容を学ぶ動機がわからない

自分の学力不足

自分の理解力不足

絶対的な勉強時間の不足

先生の教える熱意の無さ

参考

  1. はじめての講義 教えることの難しさ 西岡圭太 金沢工業大学数理工教育研究センター 大学の物理教育 21(2015)
  2. YouTuberが東京理科大学の授業にゲスト出演してみた 2021/01/16 予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
  3. 授業を難しくしている原因は、学問内容が難しいこと以外に2点あります。なんだと思いますか?それは、教科書の難しさと、教授の授業力のなさです。(大学の授業は難しいか? 稲荷塾)