腎臓のもっとも重要な働きは、体の中を流れる血液を濾過して尿をつくることです。(腎臓の働き 腎不全と透析)
腎臓は、大別すると3つの働きをしています。1つ目は濾過で、血液中に流れている栄養物や老廃物を濾過し、栄養物は血液に戻し、老廃物は尿となる原尿中に送り出します。2つ目は再吸収です。原尿中には濾過の網目をくぐったブドウ糖やアミノ酸などの栄養素が混入しているので、これらを再吸収して血中に戻し、尿中に糖やタンパク質などが出ないようにしています。3つ目は排泄で、血液中に流れている薬物や尿毒症物質などを取り込み、尿中に送り出して体外に排泄します。(腎不全や合併症のオーダーメイド医療に道 阿部 高明 東北大学医学部付属病院 腎高血圧内分泌科 講師 戦略的創造研究推進事業(さきがけタイプ)研究領域「情報と細胞機能」研究代表者)
腎臓の構造を表す用語のまとめ
- 腎臓 kidney
- 腎動脈 renal artery
- 腎静脈 renal vein
- 尿管 ureter
- 皮質(ひしつ) cortex
- 髄質(ずいしつ)medulla
- ネフロン(腎単位) nephron
- 腎小体(じんしょうたい) corpusculum renale マルピーギ小体 Malpighian corpuscle とも呼ばれる。
- 糸球体(しきゅうたい) glomerulus
- ボーマン嚢(ボーマンのう) Bowman’s capsule
- 尿細管(にょうさいかん) renal tubule 細尿管(さいにょうかん)、腎細管(じんさいかん)とも呼ばれる
- 近位尿細管(proximal convoluted tubule;PCT)
- Loop of Henle
- 遠位尿細管(distal convoluted tubule;DCT)
- 集合管(しゅうごうかん) collecting duct
- 腎盂(じんう)
- 膀胱(ぼうこう)
- 原尿
- 尿
用語に関する注意
変な話ですが、高校で習う用語と大学で習う用語が異なることはあります。
大学以降では「尿細管」と習って、例えば医学書などでも「尿細管」となっていますが、高校の生物の参考書を見てみると「細尿管」となっていて、高校と大学で呼び方が違うことを知って驚いています。(ヤフー知恵袋)。
腎臓の構造と機能を解説したYOUTUBE動画
下の動画はトライの映像授業「高校生物基礎」のサンプル動画だが、ポイントをおさえつつ、詳しすぎず、理路整然とした解説になっていて、非常にわかりやすい。
【生物基礎】 体内環境の維持33 腎臓の働き:ろ過と再吸収 (13分)
下の動画は、解剖学的なこと、形態を概観するのによい。
STD 10 (Science) – Nephron Structure and functions
下の動画は、腎臓が働くカラクリを理解するのによい。簡単な計算により、腎臓の働きがいかにアメージングかを実感させてくれる。
Renal Physiology Urine Formation Gomerluar Filtration
下の動画は、構造と機能、カラクリが簡潔にしかし適度に詳細に説明されていてよい(高校生物の参考書レベル)。ナレーションが棒読みなのが惜しいが。
Formation of Urine – Nephron Function, Animation.
下の動画は、腎臓の特色として、単に不用なものを濾過する装置でなく、一度ほとんどのものを排出してから必要なものを再吸収するということをやっているという事実を、うまい例えで説明しています(1:25~)。
Urinary System, part 1: Crash Course A&P #38
ホルモンによる腎臓機能の調節
間脳の視床下部が体液の塩類濃度の上昇を感知すると、脳下垂体後葉からのバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌を促進する。バソプレシンは腎臓にはたらきかけて、集合管での水の再吸収を促し、その結果、尿量が減少する。(高等学校理科用教科書 生物基礎 啓林館 138ページ)
ポイント
- 腎動脈、腎静脈、尿管という3つの管が腎臓につながっていることからも想像がつくが、腎臓の働きを一言で言えば、血液から不用なものをこし取って尿をつくること。
- 尿の生成は、1.濾過と2.再吸収という2段階を経て行われるという特徴がある。たとえば、濾過の段階でこしだされた水分は1日に約170Lになるが(「原尿」と呼ばれる),そのうち99%の水は再吸収され、残りの1~2Lが実際の「尿」になる。ナトリウムイオン、カリウムイオンなども大部分が濾過されたあと再吸収される。ブドウ糖やアミノ酸なども再吸収される。なぜ「再吸収」などというややこしいことをするかというと、そのほうが不要な物質の排出が効率的にできるからと考えられている。
- 腎臓の役割は、血圧の調節、体の中の水分量の調節など、体の中の「恒常性(ホメオスタシス)」を維持することととらえられる。
参考
- 腎臓のおしごと 腎らいぶらり(jin-lib.jp):腎臓病の患者さんや家族、一般の人向けの非常にわかりやすい解説。
- NHK高校講座 生物基礎 第21回 腎臓のつくりとはたらき:高校生向けの非常にわかりやすい解説でお勧めです。
- 初心者のための腎臓の構造 坂井健雄 順天堂大学医学部解剖学第1 日腎会誌2001;43(7):572-579:大学レベルの詳しさだと思いますが、非常にわかりやすい解説です。
- 腎臓 ビジュアル生理学
飲んだ水の行方:体の中のどこで吸収されるのか?
高等学校の生物学の教科書には、「水は大腸で吸収される」と記載されております。しかし、実際には口から入った水分のほとんどが小腸で吸収されます。大腸には結合水さえも吸収できる強力な水吸収能力があるため、教科書上では「水は大腸で吸収される」という記述になったのかもしれません。動物実験だと、胃に水を入れて20-30分後には、水は小腸に流れ込んで小腸から吸収されてしまいます。飲料や食品の場合、大切なのは小腸での水の吸収です。 太陽化学株式会社 メールマガジン 高橋 徹 福岡女子大学国際文理学部 食・健康学科 准教授 http://www.taiyokagaku.com/tomorrow_solution/backnumber/20150701.html
胃での吸収 胃ではアルコール分と多少の水分が吸収される。
小腸での吸収 単糖類とアミノ酸は柔毛内の毛細血管へ入り、脂肪酸とモノグリセリドは柔毛内で再び結合して脂肪粒となり、毛細リンパ管に入る。
大腸での吸収 水と無機塩類が吸収されるだけである。(引用元:新課程 チャート式シリーズ 新 生物 生物基礎・生物 148ページ)
健康な人のうんちは、80%が水分で、残る20%のうち3分の1が食べカス、3分の1が生きた腸内細菌、3分の1がはがれた腸粘膜です。(ウンチから、腸内環境がわかる!大鵬薬品)
吸収される1日の水分量 小腸で約7,000ml、大腸で約1,800mlの水分が吸収されます。
排便回数と量 1日1~2回排便され、1回の重さは約100~250gで個人差があります。大便として約100~200mlの水分が排泄されます。
便の性状便の硬さは大腸での水分吸収の程度により変わり、ブリストール便性状スケールに分類されます。(福祉教科書 介護福祉士完全高額テキスト2017年版 470ページ)
大腸の長さは1.5mほど。内側には大きくくびれたひだが続き、このひだをのびちぢみさせて食べ物の水分を吸収しています。水分を吸収された残りのかすは便となり、こう門から外におし出されます。このため、便を見れば腸の様子を知ることができます。腸が健康な場合は、水分を80%ほどふくんだバナナの形の便が出ます。腸の働きが不安定になり、よく水分を吸収できないと水分の多いびしゃびしゃの便になり、水分を吸収しすぎるとがちがちで固い便が出たりします。(食べたらどうなる NHK for School)
腎臓のマクロ、およびミクロな構造がわかりやすく説明されている図
33 Lecture Ppt by Wesley McCammon,