山に登って山頂で腰を下ろして一息ついていたときに、目の前に鮮やかな青緑でメタリックのような光沢を持った虫がいました。最初はカミキリの仲間かと思いましたが、頭部や胴体の形がそちら系ではなくて、むしろアリのよう見えます。しかし、アリにしてはあまりにも大きい。体長が4cmくらいでしょうか。
辺りをみわたすと、もう一匹、さらに小さいのが一匹。目の前だけで3匹いました。3匹まとめて写真を撮ろうと思い、一匹をつまみあげようとしたら、なにか黄色い液体が出てきて指に付きました。気持悪いので虫を離し、すぐにちり紙で拭き取りました。気持ち悪いので虫を掴まなかったほうの手で、おにぎりを食べました。
家に帰ってきて、あれこれネットで検索してみて、ようやくそれがツチハンミョウだったということがわかりました。
「ハンミョウ」と名がついているが、ハンミョウとは別の科(Family)に属する。(ウィキペディア)
ハンミョウは聞いたことがありますが、ツチハンミョウという虫がいることは知りませんでした。しかも、名前が紛らわしいですね。
このツチハンミョウ、やっぱり、アリかと最初思う人がいるんですね。自分が見たものも、この写真の虫に似ていました。触覚が若干違いますが。
こ、これはなんですか?アリですか?体長は35㎜位で青緑のメタリックボディーでした。岐阜の山奥の材料置場にいたのですが・・・【回答】ツチハンミョウの仲間で、メノコツチハンミョウですね。(ヤフー知恵袋)
黄色い液体はなんと猛毒なんだそうです。知りませんでした。下のリンク先のページでは、黄色い液体が出てきているところがリアルに捉えられています。
突いたら、コロッと縮こまってカンタリジン入りの体液を節々から出してきた。黄色い体液には猛毒のカンタリジンが含まれる(こんなものを見た)
触覚が何か違うなあと思っていたら、オスとメスの違いでした。メスは普通に真っ直ぐですが、オスは途中に何か飾りみたいに大きくなった部分があります。ということは、自分が目撃したのは3匹ともメスということになります。下のリンク先の写真が非常にわかりやすいです。
オスの触角には大きな節があるので簡単に雌雄の区別ができます。(キュウシュウツチハンミョウ・ヒメツチハンミョウ…ツチハンミョウの生態)
いろんな種類がいるんですね。ヒメツチハンミョウは色が黒いのですか。
玄関の入り口を歩いているヒメツチハンミョウ(♀)を発見(ツチハンミョウのページ)
自分が見たのは大菩薩嶺でしたが、やはり同じ場所付近でツチハンミョウが目撃されているようです。
あっ!滝子山にもいた、ツチハンミョウです!(新雪の大菩薩嶺 3 )
いろいろ見てみると、メノコツチハンミョウだったのかなと思います。下のリンク先のブログの写真は、凄い迫力があります。肢の関節のところから黄色い液体が出てくる様子が見事に捉えられています。
ツチハンミョウの仲間は札幌にも数種類いるようですが、秋に出てくるのはメノコツチハンミョウだけのようです(円山原始林ブログ)
さて、ツチハンミョウはいったい何種類いるのでしょうか?岡野ら2015(ツチハンミョウ属3 種の交尾前行動 SAYABANE No.19 pp.44-49)によれば、日本には7種いるそうです。
ツチハンミョウ属Meloe は,旧北区から16 亜属108 種14 亜種が知られており,日本にはMeloe 亜属5 種とEurymeloe 亜属2 種の,併せて2 亜属7 種が分布している.
ヒメツチハンミョウMeloe (Meloe) coarctatus (Motschulsky, 1872)
キュウシュウツチハンミョウMeloe (Meloe) auriculatus (Marseul, 1877)
メノコツチハンミョウ Meloe (Meloe) menoko (Kôno, 1936)
オオツチハンミョウMeloe (Meloe) proscarabaeus sapporensis (Kôno, 1936)
ムラサキオオツチハンミョウMeloe (Meloe) semenowi (Jakovlew, 1897)
マルクビツチハンミョウ Meloe (Eurymeloe) corvinus (Marseul, 1877)
ミヤマツチハンミョウMeloe (Eurymeloe) brevicollis (Panzer, 1793)
自分が見たものはメノコツチハンミョウかなと思います。
メノコツチハンミョウ Meloe menoko ツチハンミョウ科(北海道生物図鑑)
ツチハンミョウの生き方は非常に風変わりで、幼虫のときにハチにくっついて、ハチの巣に侵入しそこで寄生生活を送るそうです。
初めてこの黒い塊を見たときは何かの糞が付いているのかと思いました。(ツチハンミョウの幼虫 三国丘陵の自然を楽しむ会ブログ)
画像を見てみると、ハナバチの仲間を中心にその体にはツチハンミョウの幼虫がけっこうついていることがわかった。(マルクビツチハンミョウ(その5) 生きもの写真家安田守の自然観察な日々)
ツチハンミョウなんてずいぶんマイナーな昆虫だと思っていたら、偕成社という出版社から、舘野鴻さんという方(写真)がなんとその名もずばり「つちはんみょう」という本が出ていました。