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スペインの闘牛

スペインの闘牛は、一人の闘牛士が一匹の牛と戦うものという漠然としたイメージしか持っていませんでしたが、調べてみると実際はそれとはだいぶかけ離れたものでした。自分が思っていた闘牛士に相当するのはマタドール(Matador)と呼ばれる主役のことで、実際には、ピカドール(Picador)、バンデリジェーロ(Banderillero)などといった脇役が存在します。

ピカドール(槍士)は、馬に乗って槍で牛を刺して弱らせる役目。バンデリジェーロは、バンデリージャ(banderilla) と呼ばれる飾り付きの銛(もり)を牛に突き刺す役目を担う人たちです。こうしてある程度牛を弱らせておいて、マタドールが留めを刺すのです。闘牛はこれらの人達の協同作業なのでした。

 

闘牛が行われるときの演技の流れ

一回の興行は3人のマタドールによる演目として組まれ、各々が2回パフォーマンスを行うそうです。毎回牛は殺されるので、一回の興行で6等の雄牛が命を落とすことになります。

下の動画は演技をフルで見ることができます。マタドールはイヴァン・ファンディーニョ。競技場は、スペイン、マドリード州のバルデモリージョという町にあるPlaza de Toros La Candelaria。2017年2月4日の演技2回分。留めを刺すのに何回も失敗しており、快心の出来からは程遠かったようです。

Iván Fandiño – La Candelaria de Valdemorillo – 4/2/2017

0:00 雄牛の登場。
1:01 マタドール、イヴァン・ファンディーノのパフォーマンス。
4:46 ピカドール(槍を持って馬に乗った人)が槍で雄牛を刺します。
6:07 3人のバンデリジェーロが二本ずつ飾りの付いた銛を雄牛の背中に刺していきます。
8:09 合計6本のバンデリージャが刺さりました。
8:48 いよいよマタドールと雄牛との1対1の対決。
15:11 剣を持ち替えて、いよいよ留めを刺しにいきます。
15:27 留めを刺す瞬間。アクシデントが発生。体をかわしそこねたマタドールが牛の角で宙に持ち上げられたあと地面に落下しました。
17:01 怪我は負わずに済んだようで、再び留めを刺そうと試みますがうまくいきません。
18:00 再び挑戦。こんどは剣を刺すことには成功しましたが、牛は倒れませんでした。急所に刺すことに失敗したようです。
20:34 さんざんてこずりましたが、ようやく留めを刺しました。牛が倒れます。
21:30 牛を引きずって運ぶための馬が登場しました。引きずる場面は放送されませんでした。

21:43 次の雄牛が登場しました。
22:20 マタドール、イヴァン・ファンディーノがパフォーマンスを開始。
23:32 ピカドールが登場。
24:40 ピカドールが槍でぐりぐりと刺しています。
25:53 バンデリージャが銛を刺します。
26:08 二人目のバンデリージャがさらに銛を刺します。
26:26 三人目のバンデリージャがさらに銛を刺します。
27:10 マイクで何か話しをしていたイヴァン・ファンディーノが、観客のおじさんに自分の帽子を渡しました。受け取ったおじさんは非常に感銘を受けた様子。
27:23 マタドールのパフォーマンス。
35:05 留めを刺しに行きます。刺さりはしましたが牛は倒れません。ブーイングの口笛を観客が吹き鳴らしています。
36:50 再びとどめを刺そうとするも倒れず。
37:45 ようやく牛が倒れました。
38:24 インタビューに答えるイヴァン・ファンディーニョ。
38:54 殺された牛が馬によって引きずられて退場していきます。
41:09 マタドールの一人が満面の笑みを浮かべながら、仲間とともに歩いて退場します。
41:29 イヴァン・ファンディーニョが退場。明らかに自分の演技に納得がいっていない表情。
41:45 もうひとりのマタドールが、観客(?)に担ぎ上げられながら場内を一周し、退場していきます。今回、最も良い演技をしたのでしょう。

 

闘牛士の栄誉

全てのマタドールがいい演技ができるわけでもなく、人気マタドールがいつも良い演技をできるわけでもありません。観客が認める素晴らしいパフォーマンスをマタドールが見せた場合には、殺した牛の耳が与えられるそうです。耳一つ分以上のもっと良いパフォーマンスの場合は、他方の耳、さらにしっぽまでが与えられるのだそうです。下の動画は、耳2つと尻尾を獲得したアンドレス・ロカ・レイの快心の演技。演技中の観客の盛り上がりが凄いのがわかります。オーレイ、オーレイと演技に合わせて客が叫び、毎回拍手喝采しています。

Roca Rey Roquetas de Mar 24 julio 2016

4:02 最後に留めを刺す瞬間。一発で仕留めました。熱狂した観客はみな白いハンカチを振って、戦いぶりを称えています。
4:27 牛の耳2つとしっぽを誇らしげに観客にかざしてみせるアンドレス・ロカ・レイ

 

闘牛士の事故

複数の人間よってたかって牛を虐めているだけという印象もありますが、手負いの雄牛の獰猛さゆえにマタドールが大怪我をしたり命を落とす事故も起きています。

10 Worst Bullfighting Ever Recorded (事故のシーン(写真)集であるこの動画の視聴はお勧めしません)

スペインの伝統的文化ともいえる闘牛は、残虐だということで禁止の方向へ向かってきており、それとともに人気も下がってきているようです。

2011年9月25日カタルーニャでの最後の闘牛興行
2011年 スペイン全土で闘牛のテレビ中継終了を決定
2010年7月28日 スペイン本土カタルーニャ州で闘牛禁止法が成立し2012年から州内での闘牛は禁止2007年8月 スペイン国営放送が闘牛の生放送を中止
2007年 スペインの国勢調査で国民の75%が闘牛に関心がないと回答
1991年 スペイン領カナリア諸島で闘牛禁止法が成立

 

参考ウェブサイト

  1. andresrocarey.com
  2. The Bullfight Awards (madrid-traveller.com)
  3. 基本的闘牛用語SOL Y SOMBRA ソル・イ・ソンブラ
  4. マドリッドで闘牛を見た(ヨーロッパ三昧)
  5. スペインの闘牛がこんなにもエグいものだったとは・・・(世界一蹴の旅)
  6. スペイン:マドリード】二度と見たくないと思った闘牛とは?(せかいつながる)
  7. 闘牛は残酷でかわいそうは偽善?スペインで禁止された危険な闘牛をメキシコの闘牛場で観戦!闘牛士と動物愛護団体の抗議活動(JIBURI.COM)
  8. スペインの国技闘牛を見る!!マドリッド発みゅう闘牛感染ツアー
  9. 闘牛(ウィキペディア